研究課題/領域番号 |
23K03022
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分10040:実験心理学関連
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研究機関 | 追手門学院大学 |
研究代表者 |
小野田 慶一 追手門学院大学, 心理学部, 教授 (60432712)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | 統合情報理論 / 意識 / Complex / fMRI |
研究開始時の研究の概要 |
主観的な感覚質であるクオリアやその総体としての意識感覚は,脳からどのように創発されるのであろうか。情報幾何学に基づく理論の発展により,意識現象は近年ようやく科学の妥当な研究対象として認識されるようになった。本研究では,「意識は膨大な情報を因果的に統合するシステムにおいて創発される」と主張する統合情報理論に基づき,そこから予測される脳のふるまいを実験的,数理的に検証する。具体的には,脳が統合している因果的情報の量により意識現象が規定されていることを課題遂行時,安静時,及び睡眠時のfMRI実験によって示す。本研究は,ハードプロブレムとされてきた脳と心のギャップの一端を埋めることを目的とする。
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研究実績の概要 |
統合情報理論(Integrated Information Theory: IIT)は,意識の本質を解明することを目的とした理論的枠組みである。統合情報理論において,意識はシステム内の情報の統合から生じ,意識のレベルはシステム内の情報の統合の程度に依存すると仮定されている。この理論では,意識のコア,レベル,及びその内容を脳活動データから推定することが可能とされている。意識が失われると,意識のコア(統合情報理論ではComplexと呼ぶ)は崩壊し,統合された情報のレベルを反映するΦ測定値は低下すると予想される。本研究では、様々な作業中や睡眠中に機能的磁気共鳴画像法で得られたグローバルな脳ネットワークを用いて,統合情報理論の予測を検証した。Human Connectome Project(HCP)のデータセット,及び入眠時のfMRI/EEGの同時測定データを対象とした。Complexの推定には双方向結合コア(Kitazono et al., 2023)のアプローチを用い,意識レベルを反映するΦの評価にはOizumi et al. (2016)の手法を用いた。その結果,意識のコアとなるComplexは前頭頭頂ネットワーク内に位置し,タスクの内容に関わらず一定であったことがHCPデータによって確認された。さらにHCPデータから推定されたComplexと睡眠データから推定されたComplexを比較したところ,Complexの領域分布は睡眠初期から崩壊することが確認された。さらに,意識レベルの指標となるΦの測定値は睡眠が進むにつれて減少した。これらの知見は、統合情報理論による予測と一致し、その予測を支持するものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでfunctional connectivityをベースとしたComplex推定しか報告されていなかったが、本研究によりeffective connectivityをベースとしたComplexの推定が実施された。
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今後の研究の推進方策 |
これまでComplexは因果性を仮定しないfunctional connectivityによって推定されてきたが,Kitazono et al. (2023)のアプローチにより因果を仮定できるeffective connectivityをベースとして推定可能になった。2023年度で実施した検討により,睡眠による意識消失では統合情報理論の予測が支持された。このComplexとΦの変化が,意識消失全般において観察されることを確認するため,麻酔時の脳活動データで同様の解析を行う。
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