研究課題/領域番号 |
23K03031
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11010:代数学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
伊吹山 知義 大阪大学, その他部局等, 名誉教授 (60011722)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 微分作用素 / 保型形式 / モジュライ / 多変数保型形式 / L 関数 / 代数的保型形式 / ヤコービ形式 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は数論および保型形式を主題とする。保型形式は非常に対称性の高い特殊関数で、それに対応する L 関数は、その全体像が各素数での情報で記述できる数論的な対象である。ここでは全く見かけの異なる保型形式が実は本質的には同じであるという現象がしばしばおこる。とりわけ、本研究ではパラモジュラー形式、半整数ウェイトのジーゲル保型形式、ヤコービ形式、代数的保型形式などの明示的な関係を明らかにし、それを手段として用いて、異なる領域上の保型形式の L 関数の間の合同を示すということをひとつの目的にし、関連する保型的微分作用素の一般論、L 関数の特殊値、超特異アーベル多様体のモジュライ軌道などを研究する。
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研究実績の概要 |
Rankin-Cohen 型の微分作用素により、既存の具体的なジーゲル保型形式から新しいジーゲル保型形式を構成することにより、主偏極アーベル多様体のモジュライの moving slope と呼ばれる量を低い次元について確定させ、論文として出版した。これは R. Salvati Manni,S. Grushevsky, G. Mondello との共同研究である。跡部発、千田雅隆、桂田英典、山内卓也との共同研究で得た Harder 予想に関する結果を出版し、その続編を投稿した。桂田、小嶋久祉との共同研究で、池田・宮脇リフトのピリオドについての池田の予想を研究した。とりわけ、トリプル L 関数、3次のジーゲル保形形式の標準 L 関数の特殊値(微分作用素と pullback 公式などによる)を用いて、具体的な場合のいくつかで予想を厳密に証明した。青木宏樹との研究で、レベルが3までの2次の(ジーゲル)ヤコービ形式の明示的構造を確定した。証明のいたるところで、領域の制限で保形性を保つ微分作用素を本質的に用いており、その有用性が一層明らかになった。4次以上の超特異アーベル多様体のモジュライで、a-number で細分した時の構造について、Chia-Fu Yu および原下秀士との共同研究を開始した。これは4元数的エルミート群の parahoric 群についての両側剰余類による特徴づけなどを用いる。B. Williams と、エルミート保型形式について、いわばパラモジュラー形式に関する筆者の研究の延長としての共同研究を開始し、かなり状況があきらかになって進展しつつある。筆者はすでに極大でない2次整環の種指標による L 関数をアデールで簡明に述べていたが、古典的な2次形式の種の理論との関係についても新しく簡明な理論を述べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
領域の制限に関して保形性を保つような微分作用素を応用してできる整数論的な結果が広がってきており、その意味で、研究課題の意義が深まっていると思うし、実際に2次ヤコービ形式の構造定理などで、研究内容も進展している。継続している共同研究が5つあるという点で、切磋琢磨した活発な研究を行えている。一方で微分作用素の母関数の計算が、研究手段ははっきりしているのだが、時間の関係で手つかずで残っており、この点では進んでいない。
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今後の研究の推進方策 |
代表者の微分作用素の生成系の母関数に関する研究、D. Zagier とのランク8のパッフ系の解の具体的な記述に関する共同研究、青木宏樹とのレベルの小さい指数1の2次ヤコービ形式の明示的構造についての共同研究、B. Williams とのエルミート保型形式についての共同研究、Chia-Fu Yu、原下秀士との主偏極超特異アーベル多様体のモジュライの構造についての共同研究、C. Poor とのパラモジュラー形式が形式的対称ヤコービ級数で記述できるという予想の共同研究などを継続する。この最後の研究のため、まず5月5日からアメリカ数学研究所(パサデナ市)での短期共同研究プログラム SQuaRE に出席する。またこれ以外に D. Zagier, B. Williams, Chia-Fu Yu を日本に招聘するか、こちらが外国訪問をするかで、会う機会を作ることを計画している。特に Zagier は秋に彼が中国を訪問する予定があることに合わせて、日本に招聘して研究打合せを行いたい。他にも関連する外国人研究者を日本に招聘することを考えている。また日本国内でも相互訪問、研究集会への出席などを通じて、成果発表や共同研究を行う。 B. Williams との共同研究は今のところ、スカラー値の保型形式に限られているが、ベクトル値への一般化が全体の見通しをよくする上で必要と思われ、これは今後の研究課題である。なお、新しい数学的な視点としては、かつては Rankin Cohen 型作用素の理論的な基礎は研究代表者により 1990 年代に確定していると考えていたが、今回の研究の経験により、どうもそこでは捉え切れていない部分があるのではないかと思えてきた。これについても今後の研究課題である。
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