研究課題/領域番号 |
23K03034
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11010:代数学関連
|
研究機関 | 愛知県立大学 |
研究代表者 |
田坂 浩二 愛知県立大学, 情報科学部, 准教授 (30780762)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | 多重ゼータ値 / 多重L値 / レベル付き多重ゼータ値 / モジュラー形式 / モジュラー現象 / モジュラー関係式 / 多重モジュラー値 / 整数論 / Broadhurst-Kreimer予想 / 多重Eisenstein級数 |
研究開始時の研究の概要 |
モジュラー現象は多重ゼータ値とモジュラー形式との関係を記述する現象である.代表的な現象の一つに,1997年に提唱され今も未解決なBroadhurst-Kreimer予想などがあり,ここ10年来,様々な角度から活発に研究されている.その一つに,高レベル化という問題がある.Goncharovなどにより研究が進められているが,その複雑さも相まって,原動力となりうるわかりやすい現象および予想があまりない状況である.本研究では,具体的な現象を見出しつつ,そこから示唆される問題の定式化を目標とし,モジュラー現象の研究の新たなステージの幕開けを狙う.
|
研究実績の概要 |
レベル4の2重ゼータ値についてのモジュラー現象を記述する「Kaneko-Tsumura予想」に対し,前年である2022年度にいくつかの観察や明示的な予想式を得ていたが,これを研究交流などで宣伝活動を行なったところ,九州大学修士2年の喜納勝海氏の興味を惹き,氏によって解決された。喜納氏とはその後も「カスプ形式をレベル4の2重Eisenstein級数で表す(モジュラー関係式の精密化)」という本研究課題の中心的な問題について,さらなる計算を共同で行い,今後の展開を期待させる観察を得ている。 レベル付き多重Eisenstein級数の「正規化」について,前年の2022年度,部分的な結果が研究代表者の指導学生である北田の修士論文で得られていた。これも個人的な交流をきっかけに,東北大学修士2年の菅野隼氏により一般的な設定で解決された。代表者の以前の共同研究で見つけた多重Eisenstein級数のFourier係数とGoncharov余積との明示対応を拡張(一部デリケートな議論が必要だが)することが鍵となっている。多重Eisenstein級数の代数的な構造の研究へと踏み出す第一歩として,意義のある結果といえる。 モジュラー関係式の研究を進めるにあたって,既知のことを整理しておくことは意義のあることと思うが,これについて,前年2023年度に,オーバービューを執筆した。これは2022年3月に行われたRIMS研究集会「Zeta functions and their representations」の講究録に掲載される。執筆の際に,いくつか独自の計算を行なっており,今後の課題になりうる新たな観察も得られている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
レベル4のKaneko-Tsumura予想との関連から得られた研究代表者による予想や,レベル付き正規化多重Eisenstein級数の構成という問題についての進展がみられたのは良かったが,研究代表者の異動や他の共同研究に時間を費やしたこともあり,着手する予定であった本研究課題のいくつかの研究(レベル付き多重モジュラー値に関する数値実験など)に取り組めなかった。
|
今後の研究の推進方策 |
2022年度まで,月1回程度の非公式セミナーを開催し,近隣の研究者数名と本研究課題に関連する活発な研究交流を展開してきたが,この体制を新しい所属でも継続・拡大するために,まずは研究室における研究環境を迅速に構築することを優先する。研究環境が安定すれば,2022年度に積み残した「レベル付き多重モジュラー値に関する数値実験」を行いつつ,並行してモジュラー関係式の具体的な形を模索する。また,日本数学会季期研究所の企画として,本研究課題と深い関わりのある専門家らが一同に会する機会が2025年2月にあるため,それまでに新たな知見を蓄えておきたい。
|