研究実績の概要 |
2023年度は, 東京都立大学の徳永浩雄氏, 舛谷亮介氏, 寄崎恵美子氏, 徳島大学の白根竹人氏などと, ある種のKummer曲線に付随する平面曲線配置についての研究を行った. 舛谷氏が見つけた例をきっかけに, Ponceletの閉形定理と関係する興味深いconic-line arrangementからなるZariski対の族を発見することができた. また, その族について論文[1] "Poncelet’s closure theorem and the embedded topology of conic-line arrangements", arXiv:2312.01868, (R.Masuya, T.Shirane, H.Tokunaga, E.Yorisaki氏との共著論文)を執筆し, 投稿することができた. この論文の証明の中で, 特異曲線のJacobianのtorsionが重要な役割を占めていて, この方向で研究を進めることで分解型不変量の改良が可能となる見込みが得られた. また, 白根氏とのこの方向の議論の中で, 尖点を持つ平面4次曲線を含む面白い今後の研究材料になり得る配置が見つかった. 上記以外に, 徳永氏, 寄崎氏と以前より取り組んでいた研究についての論文[2]"Ramified and Split Models of elliptic surfaces and bitangent lines of quaritc curves"が受理された. また, 大阪大学の吉永正彦氏, 徳島大学の白根竹人氏とともに"Algebraic Geometry, Topology, Combinatorics and related topics"の題目の研究集会を立ち上げ開催し, 今後も年1回の開催を目指すこととなった. また, イスラエルのM.Amram, U.Sinichkin氏, モンゴル国立大学のK.Tumenbayar 氏やindependent researcherである B.Guerville-Balle氏と研究交流を継続している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度の研究は概ね順調に進展していると以下の理由で判断した. 研究概要で述べたとおり, Ponceletの閉形定理と関係する興味深いZariski対の族を発見できたとともに, 特異曲線のJacobianの役割がより見えてきたことで, 今後の研究の方向性がより明確に見えてきた. また, この内容についての論文を執筆・投稿することもできた. 研究環境については, 2023年度から, 大阪大学の吉永正彦氏, 徳島大学の白根竹人氏とともに"Algebraic Geometry, Topology, Combinatorics and related topics"の題目の研究集会を立ち上げ, 今後必要となるであろう代数幾何・位相幾何・組み合わせ論にわたる最新の研究の情報収集を行うための体制がより強化されたことや, イスラエルのM.Amram, U.Sinichkin氏, モンゴル国立大学のK.Tumenbayar 氏やB.Guerville-Balle氏と研究交流を継続していることから, 様々な研究者と交流しつつ研究が進められる見込みであることから, 順調であると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では, まずは投稿中である論文[1] "Poncelet’s closure theorem and the embedded topology of conic-line arrangements"を出版まで漕ぎ着けることを目標とする. さらに, 現在徳永氏, 寄崎氏と執筆中である, ある種のconic-line arrangementのrealization spaceについての論文を完成させ, 投稿することを目指す. また, 白根竹人氏との議論で登場した尖点を持つ4次曲線を含む平面配置をJacobianの, 非特異モデルをとった種数2の曲線のJacobianの観点や, 特異点を持った状態でのJacobianについて詳細に調べ, 分解型不変量の改良につなげることを目指す. さらには引き続き, "代数曲面ワークショップ"や"Algebraic Geometry, Topology, Combinatorics and related topics"などの研究集会を開催し, 協働体制の発展に努める.
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