研究課題/領域番号 |
23K03050
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11010:代数学関連
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
鈴木 正俊 東京工業大学, 理学院, 准教授 (30534052)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2027年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 整数論 / Riemannゼータ関数 / Weil分布 / de Branges空間 / Li係数 / ゼータ関数 / 関数解析 / 零点分布 |
研究開始時の研究の概要 |
ゼータ関数と総称される一群の特殊関数の研究において、最も重要な課題の一つが零点分布の構造を解明することである。しかし長年の蓄積にも関わらず、ゼータ関数の零点分布について証明されている事柄は極わずかである。このような状況の打開策として、零点分布に関する特定の命題を別の同値な命題に言い換え、そちらの証明を試みるという方針が多く提案されてきたが、成功した例は少ない。そこで本研究では、関数解析学を援用した考察を行うことにより、ゼータ関数の零点分布に対する理解を深め、零点分布に関連した重要な命題について、新たな同値条件、または十分条件を確立することを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究の目指すところの一つは、Selbergクラスに代表される一般的なゼータ関数の零点分布の研究に関数解析的手法を利用する新たな方法論の模索である。この事を念頭に置きつつ、まずは最も基本的なRiemannゼータ関数に対して試行錯誤を行うのは自然な研究方針であろう。本年度に得られた成果として、まずWeil分布に関する結果が挙げられる。Riemannゼータ関数に対するRiemann予想と、Weil分布から得られるある関数空間上のエルミート形式が非負値であることは同値なことが知られている。特にRiemann予想の下でその関数空間を完備化したHilbert空間 H(W) を考えることができる。一般に完備化により得られたHilbert空間に対して、完備化とは異なる特徴付けを与えることは難しい。この問題に対し、整関数の成すHilbert空間の一種であるde Branges空間の理論を利用することにより、Hilbert空間 H(W)にde Branges空間としての明示的な表示を与えることができた。この成果は研究集会で発表され、論文にまとめられてプレプリントサーバで公開された。また、この成果を得る際に用いた手法をRiemannゼータ関数のLi係数と呼ばれる数列の研究へ応用し、Li係数が適当なHilbert空間におけるベクトルのノルムとして捉えられることを発見した。この成果は数論の専門誌で発表された。Weil分布はSelbergクラスのゼータ関数等でも考えられるため、上記の成果はより広いクラスに拡張されると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は研究課題の初年度であるが、その時点で申請時に期待していたWeil分布に関する成果が一つ得られたことは大変望ましいことである。研究実績の概要で述べたWeil分布とde Branges空間の関連性からは今後の新しい展開が期待されるほか、Weil分布はSelbergクラスのゼータ関数等でも考えられるため、既に得られた結果もより広いクラスに拡張されると期待される。これらから、本研究は概ね順調に進んでいると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
申請書で述べた正準系の理論とも関係したこととして、今後の研究においてはWeil分布から得られるエルミート形式について、de Branges空間論がどのように利用できるかを探ることが当面の目標である。このエルミート形式の類似として、適当なscrew関数から定義されるエルミート形式があり、これはWeil分布のような超関数ではなく、通常の関数の理論の範囲で捉えられる利点がある。そこで今後の推進方策として、まずRiemannゼータ関数から生ずるscrew関数について研究を進める。これを数論と解析学双方の観点を踏まえて行う。
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