研究課題/領域番号 |
23K03065
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11010:代数学関連
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研究機関 | 国士舘大学 |
研究代表者 |
澤邉 正人 国士舘大学, 理工学部, 教授 (60346624)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 群複体 / 有限群 / 表現論 / 代数的位相幾何 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の最終的なゴールは『有限単純群の分類定理に対してその別証明を新たに建設すること』である。よく知られているように既存の証明は極めて長く複雑であり、市民権を得られているとは言い難い。また証明方法が壮大な【帰納法+背理法】であるため、例えば散在型単純群がなぜ 26 個しか存在しないのかという理由はその証明からは全く分からない。 既存の証明は職人技の群構造論が駆使されている。そこで本研究では、その手法として幾何学と表現論を前面に押し出していきたい。その主対象が群複体(部分群複体)である。有限群論の再生に向けて、まずは群複体の幾何と表現論を徹底的に研究する。
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研究実績の概要 |
有限(単純)群 G の部分群からなる単体複体(群複体)を介して G の構造や特徴を解明すること(単純群の分類定理の証明に新たな方法を与えること)が本研究の目的である。特に G の位数を割り切る素数 p, q に対して p-部分群全体と q-部分群全体との関わり合いに着目したい。そこでまずは理論構築の一環として G の部分群全体 Sgp(G) を取り上げ、さらに付随するデータとして自然数全体 N との直積順序複体(拡張された群複体) X=Sgp(G)×N を考察した。群複体 X には幾何的な側面と代数的な側面がある。当該年度は代数的な側面である X の表現に着目した。即ち X を自然にクイバーと見なす。このとき G の部分群 H と自然数 n との組 (H,n) に対して通常指標環 Z[Irr(H)] を Ln(H) で制限した Z-代数を対応させるクイバー X の表現 F を考察した。ここで Ln(H) は群 H 上の方程式 X^{n}=e の解集合である。この表現 F の中でカルタン行列の一般化 C を複数構成することができる。そこで対称群や交代群、あるいは散在型単純群の一つである Mathieu 群に関する C を具体的に計算し、C の行列成分や固有値・単因子の情報収集を行った。これらの数値は G の構造・表現に深く関わっているはずであり、今後の研究において極めて重要な情報である。また C に付随する指標上のグラフ Γ を新たに定義した。これは Γ の連結性・非連結性と行列 C や群 G の素数グラフとの関連性を視野に入れて導入した準備研究である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究で扱っている拡張された群複体 X=Sgp(G)×N は巨大な単体複体であり、その表現 F もあらゆる指標環を含むことから非常に抽象的で複雑な数学的対象である。一般に抽象的な対象は理論展開には向いているが、具体的な計算には向かないことが多い。しかしながら、本研究における X の表現 F の中では、考察したい素数 p, q に対して F を Z[IBrp(H)], Z[IBrq(H)], Z[Irr(H)] に制限することにより、対応する一般化されたカルタン行列 C を具体的に計算することができる。さらに当該年度は群論計算機ソフト GAP が C の計算に適用可能であることを確認した。これにより必要な情報をスムーズに取り出すことができる。このことは大きな進歩であり、今後の研究に推進力を与える。また C に付随する指標上のグラフを見出せたことは予想外のことであった。以上のように、GAP を用いて C やその固有値・単因子の計算が可能になったこと、および群複体の幾何・表現・指標に加えて指標上のグラフとの結び付きが明らかになったことなどから、本研究は概ね順調であると判断するものである。
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今後の研究の推進方策 |
当該年度では一般化されたカルタン行列 C を GAP を用いて計算し、その固有値・単因子などを求めた。様々な対称群や交代群、あるいは散在型単純群の一つである Mathieu 群などを扱った。例えば、この固有値は常に整数値を取るか、固有値と単因子が一致する場合は群の構造・表現にどのような特徴が現れるか。また通常のカルタン行列には不足群(根基 p-部分群)との関連がある。そこで既に我々の先行研究で考察している一般化された根基 π-部分群と C との間には関連があるか。以上のような課題に取り組む予定である。 当該年度では一般化されたカルタン行列 C に付随する IBrp(H), Irr(H), IBrq(H) 上のグラフ Γ を新たに定義した。このグラフには p-ブロックと q-ブロックの張り合わせの情報が反映されている。そこで Γ が連結であるために必要十分条件を G の素数グラフを用いて与えることに取り組む予定である。 本研究で扱っている拡張された群複体 X=Sgp(G)×N の指標環による表現 F はあらゆる指標環を含むため抽象的で複雑な数学的対象である。そこでクイバー X の直既約表現の分類が中長期的な研究課題である。さらに我々の表現 F を直既約表現の和に分解し、その直既約因子と群の構造・表現との関連を明らかにすることが目標である。
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