研究課題/領域番号 |
23K03079
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11010:代数学関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
成田 宏秋 早稲田大学, 理工学術院, 教授 (70433315)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2025年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 退化指標のWhittaker関数 / 非正則Eisenstein級数 / 2次斜交群 / 大きい離散系列表現 / フーリエ係数 / Fourier-Jacobi 展開 / Eisenstein級数 / 尖点成分 / 保型形式の代数性 |
研究開始時の研究の概要 |
三角関数や楕円関数など周期性を有する関数の最も発展的対象として、保型形式がありEisenstein級数そしてカスプ形式の典型例であるRamanujanのΔ関数などに代表される。保型形式の空間が基本的にこのようなEisenstein級数やカスプ形式の線形結合で尽くされる事実は保型形式論の発展の重要な基礎である。本研究はこの基礎理論を多変数保型形式へ拡張する研究を推進する。本研究は対象を非正則実解析的保型形式とするところに独創性がある。
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研究実績の概要 |
今年度は本研究課題に関する論文の数学雑誌への提出を2件行い、そのうち1件のNTT基礎研究所の堀永周司氏との実2次斜交群の大きい離散系列表現を生成する保型形式の尖点成分の決定に関する共著論文はManuscripta mathmaticaeに掲載が決定し巻号も最近決まった。もう一つの同じ群上の退化指標の実Whittaker関数が急減少にはならないことを主張した結果を含んだ単著論文があり最近査読コメントが来て対応中である。 今年度は退化指標のWhittakaer関数の研究について、成蹊大学の石井卓氏との共同研究で推進しているが、実2次斜交群の場合ですべての重複度1Kタイプの場合のWhittaker関数の明示公式について論文執筆の準備の大半を整えたという進捗状況である。これは上記の2件の論文のうち後者の続編と言えるが、大きい離散系列の場合について重複度1Kタイプが決定できていない課題が残っている。そして数論的研究として堀永周司氏との共同研究で次数2の斜交群のEisenstein級数のFourier係数(正確にはBessel周期)を明示的に与える公式を目指して、その無限素点の計算を行い、極小放物型部分群に付随する大きい離散系列を生成するEisenstein級数をターゲットとして研究するのが現実的と認識するに至った。こちらは上記の一つ目の論文の続編である。具体的には成田の方でヤコビ放物型部分群に付随するEinsenstein級数の特異指標の成分の計算を行っていたが、非常に計算が面倒であると悟り現時点で研究対象とすべきではないと認識するに至った経緯などがある。 本研究は非正則なEinsestein級数を扱っており、その先行研究の希少さは困難を物語っているが、問題の難しさはある程度想定していた。今年度の研究を通しその困難の詳細がかなり把握できて、対策の検討も進み始めているところである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Einsestein級数を明示的に調べる研究はSiegel放物型部分群に沿った正則なものが主であった。他にもヤコビ放物型部分群に沿ったEisenstein級数の水本信一郎氏の有名な論文があるがこれ以外には聞いたことがない。しかもスカラー値のものが中心である。 しかし本研究でターゲットとしている大きい離散系列表現を生成するEisenstein級数など非正則なものは基本的にベクトル値であることが多く先行研究がほとんどない。また本研究ではMeijerのG関数など高度に難しい特殊関数が関係することが想定され、挑戦性の高い研究であることは想定していた。「やや遅れている」というのは想定通りの困難に遭遇し、現実にはやすやすとは進展しなかったという事情である。一方、主任業務等の諸事象により研究の時間が例年よりかなり制限された状態で研究を実施していたという現実もあった。今年度は問題の状況について、どのような困難があり、そしてどのような対策が必要か把握するところまでが到達点であったと振り返っている。
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今後の研究の推進方策 |
今後は研究初年度に把握した問題の困難についての対策を整備し、まず大きい離散系列表現を生成する極小放物型部分群に関するEisenstein級数のFourier展開の無限素点の計算をある程度目途を付けたい。これができればFourier係数の定義ができることになり、研究がいよいよ数論的方面に向かうことになる。「無限素点の計算」とは主に積分の計算であるが、その煩雑な計算を眺めるとGamma関数、Beta関数、合流型の超幾何関数など比較的扱いやすい関数で理解できそうな部分があり、このようなできる部分の積分計算を片付けて進展を目指すのが自然な方針であろう。また、さらに発展的研究を目指し、符号(2,2)のユニタリー群の場合の研究を進めるべく調査を開始したい。これは昨年度九州大学の権寧魯氏を訪問し研究滞在して調査開始の予定であったがやむを得ない事情でキャンセルとなった。今年度は8月に九州大学での研究集会での講演依頼を受けており、昨年度できなかった研究滞在を検討しているところである。
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