| 研究課題/領域番号 |
23K03085
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| 研究種目 |
基盤研究(C)
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| 配分区分 | 基金 |
| 応募区分 | 一般 |
| 審査区分 |
小区分11020:幾何学関連
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| 研究機関 | 武蔵野美術大学 (2024) 東京工業大学 (2023) |
研究代表者 |
正井 秀俊 武蔵野美術大学, 造形学部, 准教授 (40735734)
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| 研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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| 研究課題ステータス |
交付 (2024年度)
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| 配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2027年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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| キーワード | タイヒミュラー空間 / 双曲多様体 / くりこみ体積 / 3次元多様体 / 双曲幾何学 |
| 研究開始時の研究の概要 |
本研究では,3次元双曲多様体の体積をタイヒミュラー空間を通じて理解する.特に,繰り込み体積で定義した距離について理解を深める.当面の目標は,1点穴あきトーラスや4点穴あき球面など具体的な計算が知られている対象に注力し,得られた知見を一般曲面に適用し,3次元双曲多様体の体積をタイヒミュラー空間を通して理解することを目指す.
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| 研究実績の概要 |
本研究の主な動機は、研究代表者による論文で2024年度に出版された「Compactification and distance on Teichmuller space via renormalized volume」(J. Math. Soc. Japan掲載)にある。この論文では、くりこみ体積を用いてタイヒミュラー空間上に新たな距離を定義し、空間の幾何構造に対する新しい視点を提示している。この研究に基づき、京都大学の松田凌氏と共同で研究を進めている。具体的には、くりこみ体積に基づいて定義された距離の微分構造に関連する概念として、ベアズ埋め込み(Bers embedding)の数値的な性質を調査しており、初期の結果は新たな知見を示唆するものとなっている。
また、3次元多様体の幾何構造に関する共同研究として、Kazuhiro Ichihara氏、InDae Jong氏との論文「Complete exceptional surgeries on two-bridge links」がKodai Math. J.に掲載された。この研究も低次元多様体の幾何に関する知見を深めるものであり、本研究との関連が深い。さらに、ベトナムでの「Geometry and Dynamics in Low Dimensions」や韓国での「Teichmuller Theory and Beyond」といった国際研究集会において、本研究に関する発表を行い、国内外の研究者との議論を通じて着実に知見を蓄積している。
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| 現在までの達成度 |
現在までの達成度
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、これまで所属していた東京工業大学理学院数学系から、武蔵野美術大学教養文化・学芸員課程研究室へと異動するという大きな転機を迎えた。異動に伴い、各種の手続きや環境の変化、さらに新しい授業の設計と準備など、想像以上に多くの時間と労力を要する事務的・教育的業務が重なったため、当初は研究活動に割ける時間が大幅に減少することが懸念された。
しかしながら、継続して共同研究を進めている京都大学の松田凌氏との定期的な議論や、武蔵野美術大学という美術系大学ならではの多様で新鮮な環境から受けた刺激が、自身の研究活動に対して予想以上に良い影響をもたらした。限られた時間の中ではあったが、これまでと変わらないペースで研究を推進し、一定の成果を上げることができたことは、自身にとって大きな励みとなった。
また、今回の異動により、任期付きの立場から任期のない職へと移行したことも、研究活動を安定的に継続するうえで極めて重要な要因であった。特に、将来への不安が軽減されたことで、精神的な安定が得られ、その結果として集中力や創造性が高まり、研究に対する姿勢にも良い変化が現れた。若手研究者に任期を課す制度が、いかに生産性や学術的探究心を損ない得るかを、身をもって痛感した一年でもあった。
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| 今後の研究の推進方策 |
現在、京都大学の松田凌氏との共同研究として進めている数値計算の成果を、今後は具体的な論文として結実させていく予定である。特に、筆者の論文「Compactification and distance on Teichmuller space via renormalized volume」(J. Math. Soc. Japan掲載)において定義した、くりこみ体積をもとに導かれる新しい距離関数に対して、その数値的挙動や微分構造を明らかにするための計算を本格的に進めていく。これまでの松田氏との議論を通じて得られた知見や数値手法を活用しつつ、より精緻で広範な計算データを蓄積し、理論の裏付けを強固にしていく。
加えて、くりこみ体積に基づく距離とは別に、新たな観点から定義された距離に関しても、独自の数値的手法を用いて研究を展開する構想がある。これらの距離関数は、従来の定義とは異なる特徴をもちつつも、タイヒミュラー空間の幾何に対する深い洞察を与える可能性があり、今後の研究の中核の一つとして位置づけている。
さらに、前述の論文で用いたアプローチを他の距離関数に応用することで、タイヒミュラー空間上に定義可能なさまざまな距離構造が浮かび上がってきている。これらの距離を比較・分析することで、本来調べたいくりこみ体積に関連する距離の本質的性質や幾何的意味をより深く理解する手がかりが得られると期待している。その一環として、Bonahon によって導入された Geodesic Current の理論を活用し、これを通じてタイヒミュラー空間上に新たな距離構造を構成・分析する研究にも着手していく予定である。こうした複数の視点を融合することで、タイヒミュラー空間、3次元多様体の理解をさらに進展させることを目指している。
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