研究課題/領域番号 |
23K03087
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11020:幾何学関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
菅野 浩明 名古屋大学, 多元数理科学研究科, 教授 (90211870)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2026年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 放物層の数え上げ / 量子離散パンルヴェ方程式 / 超対称ゲージ理論 / 量子可積分系 |
研究開始時の研究の概要 |
座標と運動量がともに二重周期性を持つ可積分系である二重楕円型可積分系について,超対称ゲージ理論との対応関係を通して,その性質を明らかにする.互いに可換なハミルトニアンの同時固有関数は,対応する超対称ゲージ理論側で枠付き放物層の数え上げに関する分配関数で与えられると予想されている.楕円量子群の表現論を用いて,分配関数を絡み作用素の同変指標として書き換えることにより,分配関数の満たす差分方程式を求める.また二重楕円型可積分系は座標と運動量の入れ替えに関して自己双対性をもつことが期待されている.分配関数のもつ対称性を明らかにすることによって自己双対性が実現されていることを示す.
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研究実績の概要 |
2次元共形場理論の共形ブロックは Virasoro 代数の表現論において基本的な役割を果たすが,変形 Virasoro 代数の共形ブロックの数学的定義は,まだ与えられていない.5次元版の AGT 対応は面欠陥付きの K 理論的 Nekrasov 分配関数と変形 Virasoro 代数の共形ブロックの対応を予想するので,このような Nekrasov 分配関数を変形 Virasoro 代数の共形ブロックとみなして,その性質を調べるという立場が可能である.面欠陥付きの Nekrasov 分配関数は,幾何学的には放物層の数え上げにより定義される. 近年 Sh.Shakirov 氏は,このような分配関数に対する,新しいタイプの非定常差分方程式 (Shakirov 方程式)を発見した.この非定常差分方程式は有理曲線上の共形ブロックに対する BPZ 方程式の量子変形版とみなすことができる.一方で BPZ 方程式はパンルヴェ方程式やカレント代数の共形ブロックに対する Knizhnik-Zamolodchikov (KZ) 方程式と対応することが知られている.我々は,適切なゲージ変換を用いて Shakirov 方程式を書き換えることにより,この方程式が VI 型の非定常離散パンルヴェ方程式の量子化となっていることを明らかにした.VI 型離散パンルヴェ方程式の時間発展はアフィン Kac-Moody 代数 D_5^{(1)} の拡大アフィンワイル群の適切な並進元によって定義される.この並進元を非可換な(量子化された)力学変数の空間上で表現したものが Shakirov 方程式のハミルトニアンとなっている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
枠付き放物層の数え上げから定義される K 理論的 Nekrasov 分配関数が満たす非定常差分方程式が量子化された離散パンルヴェ方程式と見なされることが示されたことは,放物層の数え上げと量子可積分系の関係に関する新たな展望を開くものである.また変形 Virasoro 代数の共形ブロックとの関係についても次のような意味から興味深い.表現論的に変形 Virasoro 代数の取り扱いが難しい理由の一つは,余積が定義できないため量子群とならないことであった.パンルヴェ方程式の量子化は,モノドロミー保存変形の立場からアフィン量子代数の表現論で重要な役割をはたす量子 KZ 方程式と結びつく.したがって今年度得られた結果は,変形 Virasoro 代数の共形ブロックに対する表現論的アプローチに道を開くものである.本研究課題は楕円型可積分系に関するものであるので,以上の結果を楕円 Virasoro 代数へ拡張することは今後の課題である.
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今後の研究の推進方策 |
ここまでの研究では楕円型量子可積分系に関する課題に進展がなかった.離散パンルヴェ方程式には楕円型の拡張も存在するので,今年度の研究成果が楕円型に拡張できるか検討を行う.また K 理論的 Nekrasov 分配関数の観点から,楕円型への拡張を行うためには随伴表現に従う物質場を考える必要があり,これにはパンルヴェ方程式を超えた世界を考えることが必要となる可能性がある.一方で,今年度の成果から派生する新たな課題として,ゲージ群のランクが高い場合への拡張も視野に入れて研究を進める予定である.
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