研究課題/領域番号 |
23K03106
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分11020:幾何学関連
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研究機関 | 埼玉大学 |
研究代表者 |
福井 敏純 埼玉大学, 理工学研究科, 教授 (90218892)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 特異点 |
研究開始時の研究の概要 |
ニュートンが導入したニュートン法及びそれから派生した理論が,多項式写像の研究にどの様に 役立つかを調べる.これは結局は多項式写像の特異点の研究であり,本研究の特徴は,ニュート ン図形を,多項式写像の幾何学の記述の基本的言語として提案する事にある.具体的には,代数 多様体のモチーフ測度に注目し,その振る舞いがニュートン図形からどのような規制を受けるか を記述することを目標とする.特異点論の解析学や微分幾何学への応用にも目を配りながら研究 を進めたい.
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研究実績の概要 |
複素多項式の位相の研究は微分位相幾何学の研究の良いモデルを与えるのは広く知られている.複素多項式にニュートン図形とニュートン図形に関する非退化性を定義し, そのニュートン図形に関する非退化性の仮定のもとで, ニュートン図形から定まる組み合わせ的情報が, 複素多項式の定める写像の位相をよく記述することは広く知られている. 複素多項式の位相はその零点集合の位相で強く規制されるので, 零点集合の特異点解消が具体的に記述できれば, 特異点解消の位相的情報を具体的に記述する事ができ, 複素多項式の定める写像の位相的情報に翻訳することができる. 複素多項式写像の位相としては,ミルナーファイブレーションが有名であるが, 複素多項式と別の複素多項式の複素共役の積がしばしばミルナーファイブレーション類似物を定めることが認識されており. 微分位相幾何学の文脈で興味を持たれ, 岡睦雄による混合多項式の研究の契機となった. 岡睦雄はラヂアルニュートン図形を定義し適当な非退化性の仮定の下ミルナーファイブレーション類似の存在を示した. しかしながら特異点解消類似物の構成については,トーリックモディフィケーションがいつ特異点解消類似物を与えるかという問いを追求することしかできておらず, ミルナーファイブレーションの解明という見地からは不満が残る.研究代表者は混合トーリックモディフィケーションを考え, それがいつ特異点解消類似物を与えるかを考察し, その結果を Singularities of mixed polynomials with Newton polyhedrons, preprintとしてまとめ,現在投稿中である. 他に, 3次元ユークリッド空間の正則曲面の折り畳み写像族(the folding family)のバーサリティが,完全に解決されていないことに気づき, 決着をつけた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
混合多項式の特異点解消について, 混合トーリックモディフィケーションが有効であることに気づき, 考察した結果を, Singularities of mixed polynomials with Newton polyhedrons, preprintとしてまとめることができた. 企図した問題に一定の寄与を与えることができたと評価している. この preprintは現在投稿中であり, 査読のプロセスにまわっていると了解している. 他に,3次元ユークリッド空間の正則曲面にたいして, 折り畳み写像族(the folding family)という族があり, Bruce-Wilkinsonによる研究が1991年に発表された. この折り畳み写像族はほとんどすべての正則曲面に対して, バーサルであることが注意されているが, どのような幾何的条件がバーサリティを保証するかは,その論文では触れられていなかった. これは解決可能であると信じ,平松篤樹氏と取り組み決着をつけることができた. この成果は平松篤樹氏との共著 Versality of the folding families of regular surfaces, preprint としてまとめ現在投稿中である. 特異点論の微分幾何的応用の1つであり, 証明中ニュートン-ピューズー展開を駆使している. 当初,企図した特異点論の微分幾何的応用の一つが論文原稿の形になり, 一定の満足できる成果と判断している, 他に平松篤樹氏とは, 折り畳み写像族を定義する運動を回転のみに制限した回転族のバーサリティも決定しておりこちらも平松篤樹氏との共著原稿 Rotation Unfolding of Folding Maps for Surfaces in R3になっている.
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今後の研究の推進方策 |
今まで得られた成果をみると研究の方向性として次の方向が考えられる. 1) 混合多項式の定めるミルナーファイブレーションは,多くの場合複素多項式との類似が成立し,A'Campoによる幾何学的モノドロミーの構成にのり, モノドロミーゼータ関数,特にモノドロミーの特性多項式などが計算できるようになった. しかしながら, 研究代表者が「零成分をもつ」と呼ぶ病的な場合は,ミルナーファイブレーションを許すが, A'Campoによる幾何学的モノドロミーの構成には載らない. この状況は多くの方の興味を引き, 慶応大学の石川昌治氏, シドニー大学のLaurentiu Paunescu氏や, レンヌ大学のGoulwen Fichou氏とすでにデスカッションが始まっている. 慶応大学の石川昌治氏によると, この方向は相当解析が難しいかもしれず, 2-3年程度で成果が出るかは不明であるが, できれば確実に興味を持たれる事が期待されるので,あきらめずに取り組みたい. 2) 特異点論の微分幾何的応用は, 平松篤樹氏と共同で進めている. 特異点の視点で幾何学的に定義された写像を解析すれば, 考えるべき特異点の余次元が定まり,その余次元までの特異点を解析するのが本来である. 平松篤樹氏と共同で得た結果はその意味で必要十分である. バーサリティまでその文脈で解析してきたので,その意味で玄人受けする結果である. 今後もこの基本的アイデアを維持しつつ,幾何学的文脈で定まる写像の研究を続けていきたい.
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