研究課題/領域番号 |
23K03131
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
井上 昭彦 広島大学, 先進理工系科学研究科(理), 教授 (50168431)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | テプリッツ行列 / テプリッツ系 / 多変量ARMAモデル / 閉形式表示 / 線形時間アルゴリズム / 有限予測 / 双対過程 |
研究開始時の研究の概要 |
「有限予測における明示公式」の原形は研究代表者により導入され、その後、研究代表者とその共同研究者を中心に発展させられてきた。特に最近は、この理論の多変量への拡張、ARMA (自己回帰・移動平均) 型連続時間定常増分過程の新生過程による閉形式表示とマルコフ埋め込み (進行中)、離散時間多変量 ARMA 過程の有限予測係数の閉形式表示、テプリッツ行列の逆に対する明示公式とその応用等の新展開およびその芽が、次々と生まれている。本研究では、これらを基に、有限予測における明示公式とその応用の理論をさらに発展させる。
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研究実績の概要 |
(1) 研究代表者は、2023年出版の論文で、minimalityとよばれる性質を持つ多変量離散時間定常過程を考察し、そのブロック・テプリッツ行列の逆行列に対する新しい明示公式を導いた。さらに、その明示公式の応用として多変量ARMA過程のブロック・ テプリッツ行列の逆行列に対する閉形式公式とそれによりテプリッツ系を解く超高速アルゴリズムを導いた。しかし、この閉形式公式とそれに基づくテプリッツ系に対する超高速アルゴリズムは、ある場合に数値的に不安定になることを、研究代表者とT.Wang氏は、数値実験により見出した。研究代表者、T.Wang氏およびJ.Yang氏は共同研究で、この点を改良する別の閉形式表示とそれに基づく安定的な線形時間アルゴリズムを導いた(現在、論文準備中)。 (2) 研究代表者と大学院生の小材拓夢氏は、これまで研究代表者とその共同研究者が発展させてきた確率過程に対する過去と未来の交差の手法を確率場に拡張する研究を行い、よい見通しを得ている。確率過程の場合のこの過去と未来の交差の手法で最初の鍵となるのは、考える確率過程が過去と未来の交差性の性質を満たすことである。この結果は1変量の場合は研究代表者の論文(2000)により、多変量の場合は研究代表者と笠原、Pourahmadi両氏の共著論文(2016)により示されている。確率場に対する交差の手法においても過去と未来の交差性と類似の性質が鍵となると思われるが、この性質は研究代表者による準備中の論文で示すことができた。そこでは、これまでとは全く異なる証明手法が用いられている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究代表者が2000年の論文で初めて導入し、その後共同研究者と共に発展させてきた過去と未来の交差の手法およびその応用に関する研究は、近年、新発見が新発見を生む正の連鎖が続いている。一方、これまでの研究はすべて確率過程の場合に限定されていた。小材氏と研究代表者は、この手法を確率場に拡張する研究を行い、よい見通しを得ている。そこで鍵となる過去と未来の交差性と類似の性質を示す結果は、すでに研究代表者により得られている。この確率場への拡張は意義が大きく、交差の手法の理論の今後の大きな発展につながる可能性が高い。この理由により、現在までの進捗状況は、当初の計画以上に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
以下の四つを中心に研究を進めていく:(i) J.Yang氏とのテプリッツ行列の逆に関する共同研究を続ける。(ii) 小材氏との共同研究を進めて、最も扱いやすい非自明な設定の場合に、確率場に対する過去と未来の交差の手法の類似物を完成させる。(iii) (ii)の設定を変えて、必要となる解析学的な研究も進めた上で、類似の結果を示す。(iv) 別の研究目的としてあげている連続時間確率過程に対する過去と未来の交差の手法とそのファイナンスへの応用の研究を続ける。
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