研究課題/領域番号 |
23K03134
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 鳴門教育大学 |
研究代表者 |
田中 晴喜 鳴門教育大学, 大学院学校教育研究科, 准教授 (60648567)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 転送作用素 / 擬コンパクト / 準安定系 / 反復関数系 / 漸近摂動 / ビリヤード力学系 / 摂動解析 |
研究開始時の研究の概要 |
時間の経過とともに変化していく力学系において長時間安定的にふるまうが,ある小さい確率で別の安定状態に移行するものがある.長時間安定的にふるまう部分を準安定状態といい,その個数及び場所を検出することが重要な課題となっている.既存の主な手法は数値データからモデル化したマルコフ連鎖を用いるために誤差が生じること,及びマルコフ連鎖を一般化した転送作用素には適用できない問題がある.本研究では,既存の手法をより厳密な手法として拡張し転送作用素にも適用できるようにすること,及び種々の準安定状態検出問題への応用を行う.転送作用素の固有空間を摂動解析し本研究に適用することでこれらの問題を解決することを目指す.
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研究実績の概要 |
令和5年度前半は,本研究課題の基礎理論構築のための研究を行った.具体的には,可算状態をもつマルコフシフトにおいて,2-シリンダーの和集合をホール(hole)にもつような転送作用素の擬コンパクト性と周辺固有値の固有空間の詳細構造について調べ結果を論文として発表した([T. '24 出版予定]).特に,閉システム(ホールを開ける前のシステム)は位相推移的であり,オープンシステム(ホールを開けたシステム)は可算個の推移的コンポーネントをもつような設定をしている.これは将来,可算状態をもつ摂動マルコフシステムを考えるうえで,任意の推移確率を0にもっていけるような設定を可能にする重要なポイントである.令和5年度後半は,将来適用できるような応用問題として,無限グラフ構造をもつ反復関数系と可算個の障害物をもつ食をもたないビリヤード力学系について考察した.無限グラフ構造をもつ反復関数系については,縮小写像が定義される空間の一般化と次元公式の考察,共形性を仮定しない場合の次元の漸近挙動,及び,次元を漸近展開した場合の係数の統計的性質を調べるための基礎研究など,多角的な研究をおこない成果発表をおこなった(計8件の発表).加えて,可算個の強連結成分に分裂するような摂動グラフ反復関数系の次元の挙動について研究を行いプレプリントを作成した.ビリヤード力学系については,可算状態をもつマルコフシフトとの1対1の関連付けについてと,ゼータ関数のオイラー表示について研究を行い,研究集会「ランダム力学系とエルゴード理論」での報告及び論文発表[T. '24 出版予定]をおこなった.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の基礎理論構築のために必要となる可算マルコフシフトのホール(hole)と結びつく転送作用素のスペクトル構造について調べ,おおむねよい結果が得られたこと,及び,無限グラフ構造をもつ反復関数系が可算個の強連結成分に分裂するような摂動の定式化と次元の連続性が得られプレプリント「Perturbed infinite graph-directed iterated function systems with degeneration」を作成できたため.
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今後の研究の推進方策 |
過去に与えた有限状態をもつ摂動マルコフシステムに関する結果[T. '20]を可算状態をもつ場合に一般化し,Gibbs測度の収束性及び最大固有値の周辺にある固有値のスペクトル構造についての考察をおこなう.その際,有限状態の場合では起こらなかった困難な問題がありそれに対処する必要がある.具体的には,有限状態の場合には摂動のパラメータを十分小さくすれば各準安定系が安定系に近づくが,可算無限状態をもつ場合は準安定系内に任意に小さい遷移確率があるため,いくら摂動パラメータを小さくとっても準安定系が安定系に近づかない問題が起こり得る.有限状態の場合と同様の結果を得るためには記号構造とポテンシャルに何等かの強い条件を課す必要があるが,そのための研究を行う.これらの研究に並行して,応用に関係する研究を令和5年度から引き続きおこなう.得られた結果の発表と論文作成をおこなう.
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