研究課題/領域番号 |
23K03142
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 佐世保工業高等専門学校 |
研究代表者 |
濱田 裕康 佐世保工業高等専門学校, 電子制御工学科, 准教授 (00634990)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 合成作用素 / C*環 / 作用素環 / Toeplitz作用素 / 力学系 |
研究開始時の研究の概要 |
合成作用素は,関数の合成を有界線形作用素と考えたもので,有界線形作用素の最も典型的な例の1つである.古くから作用素としての様々な研究がなされてきた.一方で,合成作用素を含む良い集合であるC*環の代数的・位相的構造をもとにした解析は,位相幾何学などとの関係の深いToeplitz作用素とは異なり,従来ほとんど行われてこなかった.本研究では,連続写像に対する合成作用素の環論的研究を行う.この解析により,合成作用素のC*環への遺伝度,生成されたC*環を用いた合成作用素の性質の復元可能性を明らかにする.合成作用素や重み付き合成作用素,さらにはその線形和の性質の解析への応用を目指す.
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研究実績の概要 |
合成作用素は,有界線形作用素の最も典型的な例の1つである.古くから個別作用素論の観点で,様々な研究がなされてきた.一方で,合成作用素を含むC*環の代数的・位相的構造をもとにした環論的作用素論の解析は,位相幾何学などとの関係の深いToeplitz作用素とは異なり,従来ほとんど行われてこなかった.本研究では,連続写像に対する合成作用素の環論的研究を目指す.特に,申請者がこれまでに取り組み,高い評価を得た具体的な作用素から生成されるC*環について,抽象的な別の環との同型対応を用いた解析を実施する.これまで,プレプリントとして出版していなかったが,L2空間上の合成作用素から生成されるC*環に関する研究を論文として出版した.今までCuntz-Pimsner環との同型対応を与えてきた.論文を出版する過程で証明の手法の整理を再度実施した.本計画で予定していた別の構成方法であるExelの自己準同型写像による接合積との関係について考察した.現在考察している条件の下で,Exelの自己準同型写像を用いた接合積とも同型となることが分かり,このようなC*環としても書けることが分かってきている.一方で,これまで考えてきた場合を超えていくつかの例について考察を実施した.これらの場合はこれまで考察してきた生成されるC*環が単純になる場合とは異なり,非単純になると予想される.特に閉円板上の写像を合成する場合などを検討した.同型の証明に必要な共変関係式の研究についての検討をこの場合について実施した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
具体的な作用素環をそのまま扱うのではなく,構造解析がしやすい別の構成方法によって構成されたC*環との同型対応を与えることで,研究を進めている.同型対応を与えることで,生成されるC*環の性質を明らかにすることができる.同型対応を与えるためには,交付申請書で記載した同型の証明に必要な共変関係式の研究が必要である.ここでは,作用素レベルの解析を行うことになる.一方で現状では,具体的な例が多いとは言えない.一般的な結果を得たい場合でも,様々な具体例の計算で実際にどのような現象が生じているか確認することは重要である.これまでの多くの場合では,生成されるC*環が単純となる場合を考察してきた.単純とはならない場合は,ほとんど考察しておらず,数個であった.当該年度の研究によって,生成されるC*環が単純になる場合とは異なり,非単純であると予想された場合について,これまでと違った現象が確認されている.特に閉円板上の写像を合成する場合であり,比較的簡単と思われる場合において,現状では共変関係式を具体的に計算することができていない.特にFrobenius-Perron作用素の具体的な表記方法が確立しておらず,不明な部分が多い.もう少し高い視点から状況の整理が必要だと考えられる.当初計画時点に予想していたものと異なり,予想以上に検討には時間がかかると予想される.このため,進捗は予定よりもやや遅れていると判断している.
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究に引き続き,本研究では,連続写像に対する合成作用素の環論的研究を目指す.特に,申請者がこれまでに取り組み,高い評価を得た具体的な作用素から生成されるC*環について,抽象的な別の環との同型対応を用いた解析を実施する.この解析により,合成作用素のC*環への遺伝度を考察でき,生成されたC*環を用いた合成作用素の性質の復元可能性が明らかになる.合成作用素や重み付き合成作用素,さらにはその線形和の性質の解析に応用できる.まずは,現在までの進捗状況で述べた同型の証明に必要な共変関係式の研究を進める.特に閉円板上の写像を合成する場合であり,比較的簡単と思われる場合において,現状では共変関係式を具体的な計算を実施し,特にFrobenius-Perron作用素の具体的な表記方法を確立する.さらにこの具体例の計算をもとに一般的な場合について考察する.2つ目の共変関係式については,本研究期間内には検討するに至っていないが,これまで考察した場合では成立している.どのような条件のもとで成立するかはきちんと考察する必要がある.松本健吾氏(上越教育大学)との議論をふまえ,様々な場合に適応できるように精緻化する.連続写像の場合の解析について,これまでの研究をもとにして,φが連続写像の場合について,生成されるC*環の解析を進める.共変関係式の解析が十分にできていれば,解析が可能である.同型対応を与えるためには,C*環が単純であるか,またはゲージ作用の不動点環を用いた議論を行うなど,表現によらず,共変関係式のみでC*環が決まるかの検討も必要である.
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