研究課題/領域番号 |
23K03147
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 信州大学 |
研究代表者 |
大野 博道 信州大学, 学術研究院工学系, 教授 (90554585)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 作用素不等式 / ノルム不等式 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の主題であるBottcher-Wenzelの不等式(BW不等式)は2005年に予想され2008年にその証明が与えられた,行列の非可換性に関する不等式である.近年,量子力学で提起されたある問題と,BW不等式が関連しているという報告があり,BW不等式の一般化が検討されている.すでにいくつかの一般化が提唱されているが,未解決の部分が多く,さらなる研究が必要となっている.本研究では,この未解決部分の解明をし,より良い形の一般化を求めていく.
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研究実績の概要 |
本研究では,Bottcher-Wenzel(BW)不等式という2008年に証明されたノルム不等式の一般化について研究することを目的としている.今年度は,パラメータqを用いて一般化したBW不等式について得られた結果について,国際研究集会 International Congress on Industrial and Applied Mathematics をはじめ,関東作用素論セミナーや京都作用素環セミナーといった研究会で発表をした. また,今年度は正定値行列を用いたBW不等式の一般化についても研究を開始し,以下のような結果を得ることができた.まず,この一般化においては正定値行列の固有値の値が不等式の中に現れることが分かった.この固有値を用いることで,行列の大きさが2×2の場合には,最も良い不等式を得ることができた.この結果は一般の大きさの行列でも正しいことがコンピュータによる数値計算から予想されているが,証明はまだ得られておらず,引き続き研究を続ける必要がある.次に,このBW不等式から,量子力学の不確定性関係の新しい不等式を導出できることが分かった.この新しい不等式は条件によっては既存のどの不等式よりも良いものであった. 正定値行列を用いた一般化については論文にまとめ,3月の時点でプレプリントサーバArXivに掲載し,現在閲覧可能な状態になっている.また,2024年4月時点で数学の雑誌に投稿を行っている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
パラメータqを用いた一般化については,国際研究集会 International Congress on Industrial and Applied Mathematics をはじめ,いくつかの研究会で成果発表を行っている.また,新たに正定値行列を用いた一般化ついての研究を行い,研究実績の概要にあるような結果を得ることができた.さらに,これらの結果はすでに論文としてまとめられ数学の雑誌に投稿中である. 以上のことから本研究はおおむね順調に進展しているといえる.
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究では,まず未解決である一般の大きさの行列に関する不等式の証明を行いたいと考えている.コンピュータによる数値計算では,2×2の行列と同じ結果が得られることが予想されているが,数学的な証明はまだ得られていないため,この解決が必要である. また,今回得られた不確定性関係と,既存の不確定性関係を比較する研究も行っていく.今回の不等式が既存の不等式より良くなるための条件を明らかにすることや,どのくらい良くなっているのかを数量的に表すことなどが必要だと考えている.
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