研究課題/領域番号 |
23K03154
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12010:基礎解析学関連
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研究機関 | 放送大学 |
研究代表者 |
石崎 克也 放送大学, 教養学部, 教授 (60202991)
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研究分担者 |
藤解 和也 金沢大学, 電子情報通信学系, 教授 (30260558)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | Hypertranscendency / Difference equations / Nevanlinna theory / Wiman-Valrion / Newton polygon / The order of growth / Differential equations / Helder's theorem / 差分方程式 / 有理型函数 / 微分超越性 / 値分布理論 / Binomial級数 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,複素領域での差分方程式の整函数解,有理型函数解の存在定理,および差分方程式の微分超越性に与える影響を研究の対象にする。超越的有理型函数が如何なる代数的常微分方程式も見たさないとき,微分超越的ということにする。ヘルダーの定理として知られるオイラーのΓ函数が微分超越的であることは,Γ函数が1階線型同次差分方程式y(z+1)=zy(z)を満たすことから導かれる。一般に,微分超越的な有理型函数と代数的微分方程式を満たす有理型函数の積が微分超越的になるかは不明である。この研究では,微分超越的という概念を値分布理論に従って一般化すること,高階差分方程式の解に広げることを研究目的とする。
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研究実績の概要 |
複素平面上での微分超越性の議論はHolderによるGamma函数に関する有理函数体上での微分超越性の定理から始まったと考えられる。即ち、Gamma函数は如何なる有理函数を係数とする代数的常微分方程式を満たさないということである。Holderの証明はGamma函数が1階同次差分方程式 (*) y(z+1) - z y(z)=0 を満たすことに強く依存している。もう少し言うと、(*)を満たす超越的有理型函数は有理函数体上で微分超越的である。このような背景から (*)に限らず差分方程式やq-差分方程式の超越的有理型函数はある複素函数体上で微分超越的ではないかと期待される。Holderの結果から150年近くが経ち、様々な角度からこの領域の研究がなされてきた。2023年度における研究のひとつは、複素平面上での多項式係数の高階線型差分方程式の解の存在を調べることである。更に、対象となる複素函数体を有理函数体からどこまで一般化出来るかである。前者については、与えられた差分方程式の2項級数による形式解を考えてLindelof-Pringsheim指数による収束判定法を提案した。また古典的なNewtonの折れ線とLindelof-Pringsheim指数との関係を調べ、位数が1未満の解についていくつかの結果を得た。特に、任意の0<r<1なる有理数rを位数に持つ超越整函数解を持つ多項式係数の高階線型差分方程式が存在することを証明した。対象となる有理函数体の特徴付けについては1970年代のBankによる一連の研究成果に関してNevanlinna理論を踏まえて取り纏めた。前者については論文審査が完了し2024年度以降に学術雑誌に公開の予定である。後者についは、Bankにより提出された未解決問題への取り組みも含めて研究を継続している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
微分超越性を調べる対象を差分方程式またはq-差分方程式の解として与えられる超越的有理型函数に設定した。複素領域での多項式係数の線型差分方程式は20世紀初頭にNorlund, Milne-Thomson, Whittakerらにより研究された。付帯条件が必要とされるが有理型関数解の存在も示されている。1986年にPraagmanによりいくつかの条件が緩和されたが、解の増大の位数などBankの結果を踏まえた函数体の一般化に必要な値分布論的性質の研究は遅れていた。この課題に対して2項級数の考え方を一般の高階線型差分方程式に応用した。これは、2004年・2020年に発表した論文で用いた方法を改善したものである。新しい評価式を踏まえて非自明な高階線型差分方程式の例も構成することが出来た。これらを纏めた論文は2023年度末に掲載に向けた採択をいただいた。 多項式係数の高階線型差分方程式の超越的有理型解に関する増大の位数についての情報が整理されてきたことを受けてBankにより提唱された函数体の一般化に向けた研究を進めている。1970年代のBankの一連の研究はHausdorff条件・微分超越的数列などの重要な問題提起がなされていて最近の代数的手法とは異なるものである。Bankの考察には、Gamma函数を念頭に置いた結果が多いがこれを発展させる考察を進めている。2階線型差分方程式と密接な関係のある非線形な差分Riccati方程式の超越的有理型解を一つの対象としたい。古典的なTietzeによる研究を深める必要性も感じている。2024年度は、Tietze論文の理解とRiccati方程式の超越的有理型解に対するHausdorff条件を構築することを目標として研究を進めたい。
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今後の研究の推進方策 |
高階線型差分方程式の超越的有理型解の研究については順調に進んでいる。一般的な課題と微分超越性に関する専門性の強い課題とに分けて今後の推進方策を述べる。一般的な課題としては、多項式係数を整函数係数とした線型差分方程式について同様の議論が可能かという問題がある。これに対する方策として複素平面上または単位円版で構築されているWiman-Valiron理論を半帯状領域ではどのように展開するかという課題がある。これに関しては1980年代のYanagiharaによる半帯状領域におけるNevanlinna理論の結果を基に研究を進めたい。更に位数1以上の超越的有理型函数解の取り扱いに関する課題がある。これには差分方程式の解の特徴である周期関数による影響をどのように制御するかという問題と2項級数の収束域の限界をどう乗り越えるかという問題に絞られる。前者については微分方程式における積分定数と位数の関係の議論と対比させて進めたい。後者に関しては、古典的なNorlundによる解の構築法などを参考に多項式係数2階差分方程式の場合などをプロトタイプとして解決法を見いだしたい。専門性の強い課題としては、本研究の目標のひとつであるBankの微分可能性に関する研究の深淵化がある。Tietze論文に含有される考え方を掘り起こし、差分Riccati方程式の超越的有理型函数解の値分布的性質を特徴付ける課題から取り組みたい。具体的にはTietzeの結果により、微分超越性が保障されている場合の超越的有理型函数解の記述方法である。Gamma函数の場合には、函数方程式による定義の他に積分表示・無限乗積表示がありこれらに対応するものの構築を急ぎたい。
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