研究実績の概要 |
1.微分型シュレディンガー方程式のラプラス作用素を分数冪微分に変換した方程式の 初期値問題の考察を行い, 分数冪の階数が0と1,あるいは1と3の間にあるとき, 解の漸近的振る舞いを明らかにした.この結果はJ. Math. Anal. Appl. 525 (2023) 127222,https://doi.org/10.1016/j.jmaa.2023.127222に掲載されている. 2. 修正Korteweg-de Vries方程式の線形部分にあたるAiry方程式の3階微分を分数冪微分に変換した方程式の初期値問題の考察を行い分数冪の階数が2と3の間にあるときに成果を拡張した. 階数が3にときは修正Korteweg-de Vries方程式である.分数冪微分の階数が2を境にして線形解の時間減衰評価, 解の平滑化効果が異なる. 階数が2を超えると時間減衰が遅くなり, 漸近的振る舞いを求めるという観点からは問題は難しくなる. 一方解の平滑化効果をあり, 微分項を含んだ非線形項を扱うことが容易となる.我々はこれらの性質を利用して新しい成果を得た. この結果は J. Evol. Equ., 23, Article number: 61 (2023) https://doi.org/10.1007/s00028-023-00910-1 及び Partial Differential Equations and Applications, Aricle number; 26 (2023), Published: 05 June 2023. https://doi.org/10.1007/s42985-023-00247-xに掲載されている. 3. 高階 KdV-BBM 型方程式の研究を行い, 時間大域解の存在と解の漸近的振る舞いを示した.この成果により, 我々の発展方程式に対する因数分解の手法が廣いクラスの非線形分散型波動方程式の研究に有効であることを示すことができたと考える.この結果は J. Pseudo-Differ. Oper. Appl., (2024) 15, No. 16, https://doi.org/10.1007/s11868-024-00588-0に掲載されている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
修正Korteweg-de Vries方程式の線形部分にあたるAiry方程式の3階微分を分数冪微分に変換した方程式の初期値問題の考察を行い分数冪の階数が1と2 ,あるいは 2と3の間にあるとき, 解の漸近的振る舞いを明らかにした.階数が2のときは修正Benjamin-Ono方程式, 階数が3のときは修正Korteweg-de Vires方程式と呼ばれる非線型分散型方程式となる. 結果は論文として国際誌に掲載されている.高階 KdV-BBM 型方程式の研究を行い, 時間大域解の存在と解の漸近的振る舞いを示した.ここで, 我々の発展方程式に対する因数分解の手法が廣いクラスの非線形分散型波動方程式の研究に有効であることを確認することができた.結果は論文として国際誌に掲載されている.
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今後の研究の推進方策 |
一次元シュレディンガー方程式の非線形 Neumann境界値問題の研究を継続して行い, 有限時間爆発と初期値の無限遠方減衰度, 非線形項の階数との関係を明らかにする. また外部非線形項が存在する場合に, 有限時間爆発の問題, スケール不変な空間で問題を考える研究を発展させる. 一次元の問題を多次元空間に拡張することを考える.初期値問題の研究において用いられた因数分解公式の境界値問題における有効性を再考する. 初期値問題に関しては非線形項が臨界冪以下の問題を考察し解の漸近的振る舞いを明らかにすることを試みる.非線形項が臨界冪以下の問題は初期値が解析的であるという強い条件下ではいくつかの結果が示されているが, 初期値が通常用いられるソボレフ空間にある場合は皆無である。その点においてこの試みは挑戦的な研究課題と考える.
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