研究課題/領域番号 |
23K03166
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12020:数理解析学関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
石渡 通徳 大阪大学, 大学院基礎工学研究科, 教授 (30350458)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | プロファイル分解 / 半線型放物型方程式 / 非コンパクト性 / 解の漸近挙動 / 抽象力学系 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、これまでほとんど一般論が展開されてこなかった、非コンパクト軌道を持つ力学系の挙動を解析するための抽象的枠組みの構築を目指すものである。中両論の構築に当たってはこの範疇に入る具体的な方程式の解析も欠かせない。具体的な研究対象は、(A) 臨界型関数不等式に付随するプロファイル分解の構築、(B) 有界だが非コンパクトな軌道をもつ力学系の抽象論の開拓、(C) 臨界ソボレフ指数をもつ半線型放物型方程式 (SH)、及び平均曲率一定曲面に付随する熱流方程式の解の挙動の解析、の 3 つの柱からなり, それぞれの研究は互いに影響しあいながら進展する。
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研究実績の概要 |
本年度の研究は1.空間全域で定義された半線型放物型方程式の時間大域解の漸近挙動、2.非斉次非線型項をもつ劣臨界放物型方程式の解の爆発レートに関する研究、及び3.2と同じ放物型方程式の解の漸近挙動の研究を行った。第1のテーマについては、これまでに得られた空間次元一次元の場合に対する結果を、空間一般次元の場合に拡張し、任意の時間大域解に関するプロファイル分解を完成させ、この結果を用いて、基底エネルギー値にエネルギー値が収束する任意の時間大域解の漸近挙動を明らかにした。この結果は、空間一次元の場合と同様に、空間非有界性に由来する解の平行移動距離が初期値のエネルギーで抑えられることを明らかにしたものであり、従来の結果を新たな観点から一般化するものである。第2のテーマについては従来べき型非線型項に対して知られていたtype I爆発レートの解析を、非斉次非線型項を持つ場合に拡張した。主な手法は Giga-Kohn による後方自己相似変換を用いるものであるが、従来扱われてきたべき型非線型項の場合と異なり、非斉次非線型項の場合は非線型項が変換のもとで不変にならないため、注意深い評価が必要となる。本研究ではこれを実行した。第3のテーマについては空間全域で定義された非斉次非線型項をもつ半線型放物型方程式に対して、安定集合、不安定集合の存在を示した。これにはNehari汎関数のスケールに関する性質を注意深く用いる必要があるが、ミラノ大学の共同研究者の助けを借りてこれに成功した。またこの結果は、非線型項が漸近的にべき型臨界非線型項となる場合も含んでいる。臨界ケースについてべき型でない結果はおそらくこれまでに知られていないと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究期間全体の目標として、1.半線型臨界放物型方程式、2.非有界領域上で定義された半線型放物型方程式、3.H-sysytemに付随する熱流について、時間大域解のプロファイル分解を確立し、その漸近挙動を共通の土台の上で解析することを目指している。1についてはほとんど解析が終了し、時間大域解の漸近挙動は空間全域における平衡解のスケールと平行移動の重ね合わせに漸近することが示されているが、細部についての検討が残されている。2についてはべき型の場合についてはほぼ研究が終了し、現在非斉次非線型項を持つ場合への拡張を試みている。3についてはエネルギー汎関数を不変にする自然なスケール変換に対応するG-位相がBMO空間における強位相と一致することが示され、熱流の漸近挙動に対する研究の端緒が終了した段階である。以上の経過から、おおむね順調に進呈していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
本研究は従来網羅的には取り扱われてこなかった、有界だが非コンパクトな軌道を持つ力学系についてその抽象的な一般論と、これまで非線型偏微分方程式論で個別に扱われきたこのクラスの方程式に対する解析を統一的に見直し拡張を図るという、二つの側面をもつ。その背景的視点として、G-ヒルベルト空間において有界だが非コンパクトである列に対するプロファイル分解の抽象論があるため、力学系の抽象論、または具体的な非線型放物型方程式の解析の進展状況に応じて、プロファイル分解の抽象論を展開する必要もある。以上のように本研究の射程は多岐にわたるが、当面は具体的知見を積み上げるため、非有界な空間領域上で定義された放物型方程式の解の漸近挙動、臨界指数をもつ放物型方程式の解の漸近挙動、及びH-systemに付随する熱流の解の漸近挙動に集中する。
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