研究課題/領域番号 |
23K03176
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12020:数理解析学関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高木 泉 東北大学, 理学研究科, 名誉教授 (40154744)
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研究分担者 |
鈴木 香奈子 茨城大学, 理工学研究科(理学野), 准教授 (10451519)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 反応拡散-常微分方程式系 / 受体-配体模型 / 跳躍不連続性 / 定常パターン / 安定性 / 進行波解 / 反応拡散系 / パターン形成 / 安定定常解の連続体 / receptor-ligand 反応 |
研究開始時の研究の概要 |
生物の形態形成のモデルとして提唱された反応拡散系の中で,拡散種と非拡散種が共存するものについて,近年,安定な定常解が複数個の連続体をなすことが判明した.「複数個」の意味を空間一次元の場合に説明すると,定常解の極大点の個数に応じて,それぞれ独立した連続体が形成されることなどを指す.パターン形成の観点からは,それぞれの連続体が吸引する初期値の全体を知ることが基本的な問題となる. 本研究は,生物の形態形成のような比較的短時間でパターンが形成される現象のモデルに着目し,空間方向の極大点の個数のようなわかりやすい指標により,初期値と最終パターンとの間の関係を明らかにすることを目指すものである.
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研究実績の概要 |
拡散種と非拡散種との相互作用との結果として様々なパターンが形成される.代表的な例として,発生生物学の受体-配体模型や森林区域変動模型などがある.本研究では,そのような方程式系の中でも,定常解の連続体が存在するものについて,初期-境界値問題の解の挙動をパターン形成の観点から明らかにすることを目指す.数値解を見る限り,すべての種が拡散する古典的な反応拡散系に較べて,定常解に短時間で収斂する傾向があると判断できる.その理由を明らかにすることが当面の大きな目標である. 研究代表者は,拡散種が1個で非拡散種が3個の系について進行波解を構成した. 他方,分担者は,複数本の常微分方程式と1本の反応拡散方程式から成る拡散-非拡散系について以下の二つの結果を体系的にまとめ学術誌に投稿した.また,研究結果の講演を積極的に行った. (1)少なくとも連続であるようなレギュラーな定常解の存在とその不安定性:最も単純な系である,一つの常微分方程式と一つの反応拡散方程式から成る連立系について,常微分方程式の非線形項がもつ自己触媒作用が不安定性を引き起こすことが分かっていた.これに関して,系が複数本の常微分方程式を含む一般の場合にも常微分方程式系の反応項から定まる定数定常解における線形化行列が不安定性に重要な役割を果たしていることを明らかにし,レギュラーな定常解はすべて不安定となることを明らかにした. (2)常微分方程式系を満たす解がジャンプをもつ不連続な定常解の存在とその安定性:空間n次元の有界領域上で不連続な定常解の構成方法を示し,それが安定になり得る条件を明らかにした.これにより、安定な不連続定常解の近くから出発した解の最終的な形状が理解可能であり,数値計算を行う際の大変有用な結果を得ることができた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
定常解の性質・構造を(例えば界面の個数などについて)分類し,安定なものを抽出することを第一の目標に据えたが,この点に関して実質的な進展がなかった.数値解の挙動の研究がやっと系統的にできる段階に着いたばかりである.一方,進行波解の構成については,進展があり,論文として投稿準備中である.国際研究集会を開催し,関連分野の研究者と討論することができたのは大きな収穫であった.
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今後の研究の推進方策 |
年度前半は,数値解の挙動の系統的な研究に集中し,初期値と安定な定常解の構造との関係を予測できないか,いくつかの方程式系で実験することにする.後半は,進行波解の存在と安定性を重点的に研究する.また,高次元領域における変数係数の場合の定常解の存在と定性的性質の解明のための方法を掘り下げて追求する.
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