研究課題/領域番号 |
23K03180
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12020:数理解析学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高棹 圭介 京都大学, 理学研究科, 准教授 (50734472)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 平均曲率流 / フェイズフィールド法 / 幾何学的測度論 / 変分問題 / 特異極限問題 / バリフォールド / 弱解 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、平均曲率流方程式のような曲面の発展方程式を、その解の構成方法としてよく知られているフェイズフィールド法(Allen-Cahn方程式による近似法)によって解析する。Allen-Cahn方程式の解の特異極限は、適切な条件下では平均曲率流方程式の弱解になることが知られている。本研究ではフェイズフィールド法を発展させ、応用上重要な問題である平均曲率流方程式の障害物問題や結晶成長のモデル方程式のような、より一般の曲面の運動方程式の弱解の存在を明らかにする。
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研究実績の概要 |
(1)研究協力者の長山 雅晴氏(北海道大学)、榊原 航也氏(金沢大学)と、体積保存の性質を持つ自己駆動体モデルのフェイズフィールドモデルを考察した。長山氏らによる先行研究では、初期時刻における体積と各時刻における体積の差をペナルティとしてAllen-Cahn方程式に組み込むことによって体積保存条件を得たが、本研究では保存する積分量に修正を行い、移流項がない場合には$L^2$勾配流の性質を持つ新しい非局所項付き反応拡散方程式を得た。次にこの解の数学解析を行い、空間次元が2または3のときに、解の特異極限がrectifiable varifoldと呼ばれる曲面に相当するRadon測度であることを示し、特異極限が界面発展方程式の弱解になることも証明した。 (2)適切な仮定の下では、Allen-Cahn方程式の解の特異極限からrectifiable varifoldが得られることは良く知られている。その証明では、Allen-Cahn方程式のディリクレエネルギーとポテンシャルエネルギーの差によって定義されるdiscrepancy measureと呼ばれる符号付測度が極限で消滅することを示す必要がある。この消滅の証明方法は、楕円型の場合と放物型の場合では大きく異なり、放物型の場合は極めて複雑である。本研究では楕円型の場合の証明方法を放物型の場合に応用し、discrepancy measureが非正値かつAllen-Cahn方程式のエネルギーから定まる測度の密度等に適切な仮定を入れた場合に、領域の内部でこの消滅を示した。証明には主に楕円型のAllen-Cahn方程式の単調性公式と、Radon測度の性質を用いた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)については、移流項を消すと$L^2$勾配流となるような、構造が自然なモデルを提案し、その数学解析を進めることが出来た。 (2)については、得られた結果自体は新しいものではないが、特異極限がrectifiable varifoldであることの証明で最も技巧的な部分を比較的簡潔な証明方法に置き換えることが出来た。また、この方針で証明方法を見直すことでより一般の問題に適用できることも考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
(1)については、引き続き得られたフェイズフィールドモデルや特異極限の数学的な性質を精査する。特異極限から得られる界面発展方程式とフェイズフィールドモデルを比較し、片方の解が持つ性質の類推としてもう片方の性質を明らかにする。また、ポテンシャルエネルギーを一般化した場合にどのような解や特異極限が得られるか調査する。 (2)については、曲面の発展方程式への応用のために仮定をどこまで弱められるか精査する。また、本年度は領域内部での結果を得たが、次年度以降はノイマン境界条件等を課した方程式に対する境界を込めた問題に取り組む。
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