研究課題/領域番号 |
23K03185
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12020:数理解析学関連
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研究機関 | 熊本大学 |
研究代表者 |
鷲見 直哉 熊本大学, 大学院先端科学研究部(理), 教授 (50301411)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 解析学 / 力学系 / エルゴード理論 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,互いに異なる周期軌道の組に対して,一方の軌道の近くから他方の軌道の近くに移動する別の軌道がある,という局所的な条件から,次の大域的な力学系の性質(a)と(b)を導く:(a)すべての軌道の存在確率密度が決まるならば,この存在確率密度は一意的に決まる.(b)有限時間での軌道の存在確率密度と,無限に時間が経過した軌道の存在確率密度との差は,エントロピーとポテンシャルという2つの値を用いて具体的に表示できる. 更に,次の結果(c)を導く:(c) 稠密な軌道をもつ可微分力学系が,C1 級の摂動を加えてもその性質を失わないならば, 統計的安定的を満たす力学系で近似できる.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,軌道同士の振舞いに関するある局所的な条件から,軌道の存在確率密度に関する次の大域的な性質(1)と(2)を導くことである:(1)すべての軌道の存在確率密度が決まるならば,この存在確率密度が一意的に決まる.(2)有限時間での軌道の存在確率密度と,無限に時間が経過した軌道の存在確率密度との差は,エントロピーとポテンシャルという2つの値を用いて具体的に表示できる.特に本研究では,互いに異なる軌道の組に対して,一方の軌道の近くから他方の軌道の近くに移動する別の軌道がある,という局所的条件のみから上の性質(1)と(2)を導くことを目的とする. 更に,本研究の応用として,次の結果(3)を導く.(3) 稠密な軌道をもつ可微分力学系が,摂動を加えてもその性質を失わないならば, いくらでも小さな摂動を加えることにより,性質(1)と(2)を安定的に満たすようにできる. (1)に関連して,拡大性と明記性を持つ力学系に対して軌道の存在確率密度の一意性を調べた.拡大性と明記性を満たす位相力学系は,許容的な連続関数に対して平衡状態と呼ばれる不変確率測度をただ一つ持つことが知られている.しかし,平衡状態は軌道の存在確率密度と一致するとは限らず,それゆえその一意性もわかっていない. 双曲型測度は,Katokの定理によって双曲型集合により近似することができる.明記性を仮定すると,この双曲型集合の全ての安定多様体と別の双曲型測度によって構成される周期点の不安定多様体をつなぐことができるため,安定多様体によるホロノミー写像が定義できる.このとき,更に拡大性を仮定すると,このホロノミー写像を双曲型集合の近傍に拡張できることがわかった.ホロノミー写像に関するこの性質により,安定多様体と不安定多様体が位相横断的に交わることが期待できる.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度の研究では,性質(1)の証明を目指したが,目標を達成できなかったため.
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今後の研究の推進方策 |
研究実績の概要で述べた局所的条件から,大域的性質(1)と(2)を導くことを次年度の目標とする.(1)については,拡大性と明記性をもつアトラクターに対して,存在確率密度の一意性を示す.(2)については,強横断性を満たす公理A力学系に対して,有限時間での軌道の存在 確率密度と,無限に時間が経過した軌道の存在確率密度との差を評価する.
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