研究課題/領域番号 |
23K03187
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12020:数理解析学関連
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研究機関 | 学習院大学 |
研究代表者 |
谷島 賢二 学習院大学, 理学部, 研究員 (80011758)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 時間周期的な相互作用 / 多体問題 / 散乱の完全性 / エネルギーの有界性 / 拡張相空間 / 拡張ハミルトニアン / シュレーディンガー作用素 / 4階4次元 / シュレーディンガー方程式 / 時間周期量子力学 |
研究開始時の研究の概要 |
時間周期シュレーディンガー方程式の数学的な研究を行う。 以下の問題を同時進行的に研究する。 (1) 初期値のエネルギーが有限な初期値問題のすべての解のエネルギーが時間無限大において有界にとどまると仮定すれば、既存の多体シュレーディンガー作用素に対する散乱理論の手法を適当に修正することによって時間周期系の散乱の完全性が導けるのか否かを検証する。 (2) 初期値問題の解のエネルギーが時間無限大において有界にとどまるか否かを, 微分方程式の手法によって研究する.(2) シュレーディンガー方程式が粒子系の運動を一意的に生成するための既知の十分条件, とくに外部電磁場の微分可能性の条件を緩和する。
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研究実績の概要 |
研究課題「時間周期シュレーディンガー方程式の解析」における研究目的は多体散乱問題の完全性、すなわち時間に関して周期的な相互作用をする任意個数の粒子系が、時間無限大において、束縛状態をなすいくつかの部分系に分裂し、各部分系の運動は互いに独立な自由運動に漸近することを証明することである。この証明のためには粒子系のエネルギーが全時間にわたって有界であることを保証する必要がある。これは極めて難問で、無限遠で零に収束するポテンシャルをもつ単体問題でも、ポテンシャルの時間的な振る舞いに関する何らかの条件をおかない限り一般には不成立であることが知られている。本研究では、2粒子間相互作用ポテンシャルが適当なルベーグ空間において時間に関して一様に小さければ、一般的にエネルギーの有界性と散乱の完全性が成り立つことを、波動関数の時空上の振る舞いに関するStrichartz評価と加藤の H-smoothnessの理論で用いられた議論を適用し、ついで Bourgainによる帰納法を用いて初めて証明した。このとき、任意個数の粒子系が時間無限大において互いに独立な自由粒子として振る舞うことも同時に証明した。
この問題の他に、前年度までの研究課題の続きとして、4次元空間における4階シュレーディンガー作用素の波動作用素が連続となるルベーグ空間の指数を、ポテンシャルの無限遠方での減衰に関する条件のみで、シュレーディンガー作用素がスペクトルの閾値に特異性を持つ場合を込めて、端点指数$p=1, \infty$を除いてほぼ完全に決定した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
時間に依存する二体間ポテンシャルによって相互作用する多体量子力学系に対して、相互作用力が弱ければ、ポテンシャルの時間に関する振る舞いに無関係に一般的に、散乱理論の完全性とエネルギーの有界性が証明できたことは、より一般の時間周期相互作用量子系の運動の研究への第一歩として有意義である。
4階自由シュレーディンガー作用素の特性多項式の原点での特異性がモース関数的ではないことから4階シュレーディンガー作用素の閾値における特異性の種類は豊富で、レゾルベントの閾値での特異性のタイプは通常のシュレーディンガー作用素に比較して2倍多い。このすべてのタイプについて波動作用素が連続となるルベーグ空間の指数を決定できたのはモンゴル大学のA. Galtbayar 教授との共同研究によるところが大きい。
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今後の研究の推進方策 |
一般の時間周期相互作用量子系の散乱理論を展開するためには、粒子系のエネルギーの全時間にわたる有界性を示すことが必要である。このためには時間に関する周期性を本質的に取り込んだ議論を展開することが必要である。一般の時間依存ポテンシャルに対しては単体問題においても不成立であることが知られているからである。単体問題の時間周期系に対する散乱の完全性はエネルギーの有界性を経緯することなく証明されている(1978年、研究代表者による)。この場合でも、時間周期性なしではエネルギーの有界性は一般には不成立であるので、まずは単体問題におけるエネルギーの有界性が、ポテンシャルの時間周期性からどのようにして導けるかを1978年の論文を再吟味して明らかにしたい。その上で、この議論が多体問題にどのように拡張できるか検討していくことにする。
波動作用素のルベーグ空間における有界性の問題は次元が低い偶数次元空間においてより難しくなる。実績報告の項でのべたように4次元空間での問題を解決したので、次に2次元空間でのこの問題に挑戦する。準備的考察では4次元空間の解析に用いた基本作用素は2次元でも高エネルギー部分に対しては効果的に働くが低いエネルギ部分では特異性が強すぎて望ましい性質を持たず、目下のところ波動作用素が連続となるルベーグ空間の指数を予想するのが困難である。モンゴル大学の A. Galtbayar 教授との共同研究によってこの困難を解決する
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