研究課題/領域番号 |
23K03188
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12020:数理解析学関連
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
中野 雄史 東海大学, 理学部, 准教授 (50778313)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 物理測度 / ランダム力学系 / Markov作用素 / 熱力学形式 / 準安定性 / 条件付き極限定理 / 共形測度 / 複合Poisson過程 / 非双曲力学系 / ホモクリニック接触 / Lyapunov指数 |
研究開始時の研究の概要 |
可微分力学系理論において,「典型的な力学系は,双曲性と呼ばれるある種の秩序立った幾何構造を持つか,観測可能な平衡状態が無限個存在するという非常に複雑な振る舞いを持つかのどちらかである」という分類定理が知られている.Newhouseは,後者のような複雑な統計を持つ非双曲力学系が豊富に存在することを示した.その一方Araujoは,ある種の強いランダム摂動下では,その双曲性の有無に関わらず平衡状態が高々有限個となることを示している.本研究課題の目標は,NewhouseとAraujoの定理の多方面からの改良を通じて,ランダム非双曲力学系理論という自然な研究領域を開拓することである.
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研究実績の概要 |
V. Araujoは2000年に、「物理ノイズ下ではBirkhoff非正則集合がLebesgue測度零になる」ことを証明した。これはPalis予想への部分的貢献など可微分力学系理論に少なくない影響を与えたが、その後目立った進展はなかった。これに関連して次のような成果を得た。 (1)中村文彦氏・豊川永喜氏(北見工大)、P. Barrientos氏(UFF)との共同研究で得られた、Araujoの結果の一般化に関する結果をまとめた論文が、Asterisqueより出版されることが決定した。さらに、これらの結果はノイズが独立同分布なものに限った結果であったが、これをMarkov過程由来のノイズに一般化することに成功した。 (2)Araujoは時間平均の存在と有限性までしか結論していないが、物理ノイズ下では中心極限定理なども成立することを上記の共同研究の中で示した。これはM. Castroたちの最近の結果にあらわれるように、準安定性にまつわる問題と強く関係しており、これを背景として準安定カオスについて研究を進めた。これは多岐に渡り、中村氏、S. Lloyd氏(XJTLU)、S. Vaienti氏(CIRM)、G. Froyland氏(UNSW)、C. Gonzalez-Tokman氏・J. Atnip氏(Queensland)、P. Varandas氏(Porto)、田中晴喜氏(鳴門教育大)、鈴木新太郎氏(東京学芸大)らを含む複数のグループと研究を進め、一部完成した部分を論文投稿準備中である。特に、準安定カオスの中心極限定理・大偏差原理の定式化および証明は決定論的力学系の文脈でも新規なものであり、様々な一般化が期待される。その他、J. Leppane氏・平野純氏との共同研究で、Poisson過程のようなランダム時間に対するカオス力学系の極限定理を証明し、これを論文投稿準備中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は、ランダム力学系の物理測度の存在と有限性、およびその精密化である諸々の極限定理について、様々な結果を得ることができた。これは当初の目標であったAraujoの結果の一般化も含む。そのため、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
Araujoの結果の一般化に関しては、多くの進展があったため、このまま研究を進展させていく。一方で、ランダム力学系のホモクリニック接触を通じたNewhouseの結果の一般化については時間の都合から十分な検討がなされないままとなっているため、来年度はこれに十分な時間を割く予定である。具体的には、ランダムなホモクリニック接触を持つ力学系を微小摂動した場合に無限個のランダム吸引周期点を構成できるかを確認し、さらに持続的なランダムなホモクリニック接触を構成できるかを、ランダムthicknessの導入とその摂動安定性の解析によって、確認する予定である。さらに、今後の発展が期待される準安定カオスの問題についても十分な時間を割く予定である。
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