研究課題/領域番号 |
23K03193
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12030:数学基礎関連
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
横山 啓太 東北大学, 理学研究科, 教授 (10534430)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 逆数学 / 証明論 / 計算可能性理論 / 決定可能性公理 / 強制翻訳 / ラムゼイの定理 / 非可述的公理 / 超準モデル / クリプキモデル |
研究開始時の研究の概要 |
数理論理学・逆数学分野において確立されてきた,多様な視点から数学の命題の難しさ・複雑さを評価する諸種の尺度に着目し,それらを結集・融合して,逆数学の枠組みの理解 を深める.特に無矛盾性命題,反映原理,決定性公理等の証明論視点,超準モデルやクリプキモデルの活用,計算可能次数における基底定理の解析等の異なる分野の手法の相互関係を解明し,多元的な尺度として活用していく.さらにその理論を証明論分野における証明の長さに関連した未解決問題や解析学の難問の「難しさの理解」等へ応用する.
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研究実績の概要 |
令和5年度の主な研究結果は「1.2次元ラムゼイの定理の強さを巡る詳細な分析」「2.計算可能性理論における低基底定理を用いた強制翻訳の導入とその応用」「3.算術的超限再帰に関連する計算可能次数の階層構造の分析」「4.非可述領域におけるΠ^1_2-公理系の階層構造」があげられる. 1では,2次元ラムゼイの強さ,特にその算術的帰結を決定する長年の未解決問題についてENS LyonのLe Houerou, Pateyの両氏と継続的に研究を行っている.特に,epsilon_0と呼ばれる順序数の整楚性を仮定した状況における2次元ラムゼイの定理の算術的帰結が完全に確定された.またPi^0_4までの複雑性の論理式についての帰結の確定も進んでいる.2では研究室学生との共同で計算可能性理論と強制翻訳の複合手法の一般論の構築を進めている.この結果と1の議論を組み合わせることで,2次元ラムゼイの定理の算術的帰結の複雑性の限界や証明の長さに与える影響等が多角的に分かるようになってきている. また,3では研究室学生との共同により,算術的超限再帰を導くような諸種の公理を計算可能性の視点からの再分析を進め,探索問題のなすWeihrauch 次数と呼ばれる構造における算術的超限再帰周辺の命題の振る舞いをより詳細に分析することができた.4ではウイーン工科大のPacheco氏や研究室学生と共同で可述・非可述の中間領域やそれより上の領域を扱う階層構造を算術体系のPi^1_2-公理系の階層として表現することができた.さらに,こうした階層がGalvin-Prikryの定理の詳細階層や変形された決定可能性公理の階層としても表現できることも得られており,それらを通じてこのような構造を計算可能性理論の視点からも再分析できるのではないかと考えている.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題の主軸である証明論と計算可能性理論の手法の融合とそれによる証明解析が,算術的領域,算術的超限再帰の領域,それを越える非可述領域のそれぞれにおいていずれも順調に進んでいる.特に計算可能性理論における基底定理を用いた証明翻訳の定式化とその組み合わせ命題の公理系における証明の長さの分析への応用は,多くの適用例を持つことが分かり,今後の研究において軸となる手法となることが期待できる.さらに非可述領域の公理系を特徴付ける新しい手法も創出でき,可述非可述を結びつける階層構造が得られるなど,今後の研究の礎となるような結果が得られた. また,ENS Lyonからのインターン学生の受入やウイーン工科大の研究グループとの研究者交流などを通じて複数の新たな国際共同研究の枠組みも複数立ち上げることができた.研究計画段階において期待されていた成果が,特に計算可能性理論と関わりの深い各テーマにおいて順調に推移し,さらに想定以上に多くの関連する発展的な研究テーマの創出も進んでいる.
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今後の研究の推進方策 |
初年度の研究は,特に計算可能性理論と関わりの深いテーマについて非常に順調に進展した.一方,より証明論的手法を強く必要とするテーマや,解析学への逆数学手法の応用等については着実な進展は見られたものの決定的な成果はまだ得られていない.次年度はこちらの方向性の発展も加速させる必要がある.どちらのテーマも東北大学における研究グループの多くの学生がテーマに参画する準備ができてきており,今後は学生との共同研究による研究の加速を進める.さらに証明論的手法については特にウイーン工科大の研究グループがこうした手法の専門家として共同研究に加わってくれたため,今後は両グループにおける知見を集積していくことが新たなブレークスルーを得る足掛かりになると考えている.
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