研究課題/領域番号 |
23K03207
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12030:数学基礎関連
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研究機関 | 茨城工業高等専門学校 |
研究代表者 |
弘畑 和秀 茨城工業高等専門学校, 国際創造工学科, 教授 (30321392)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 離散数学 / グラフ理論 / 閉路 / 次数 / 弦 / 弦付き閉路 / 点素な閉路 / パンサイクリックグラフ / 頂点 / 辺 |
研究開始時の研究の概要 |
グラフのすべての頂点を通る閉路を「ハミルトン閉路」という。グラフがハミルトン閉路をもつかどうかを判定することは一般には困難である。そのため、どのような条件があればグラフにハミルトン閉路が存在するのかについて、これまで数多くの研究が行われてきた。本研究ではハミルトン閉路をも含む一般の閉路について研究を行う。特に、頂点や辺などの指定要素を通り、弦(閉路上の非連続な2頂点を結ぶ辺)をもつ閉路の存在性や閉路の長さに関する研究を行う。このような閉路に関する研究を行うことで、グラフの構造をより明らかにすることができる。
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研究実績の概要 |
グラフの閉路上にある非連続な2頂点を結ぶ辺を「弦」という。本研究課題の初年度にあたる令和5年度は、従来の閉路に関する研究を拡張し、弦をもつ閉路(弦付き閉路)に関する研究を行った。二つのグラフがどの頂点も共有しないとき、それらのグラフは「点素」であるという。ここで、kを1以上の整数とする。1963年、CorradiとHajnalによって、「グラフGは頂点数が3k以上で最小次数が2k以上であるとき、Gにはk個の点素な閉路が存在する」が証明された。この結果はEnomoto(1998年)とWang(1999年)によって異なる証明法で、「非隣接2頂点の最小次数和(Ore Condition)が4k-1以上」へと非隣接2頂点の最小次数和条件に関して最良の結果に改良されている。これはグラフのすべての頂点の次数が大きくなくてもよい、すなわち、ある点の次数は小さくても非隣接2頂点の最小次数和が大きければよい、という点が重要である。 どの2頂点も非隣接な頂点の集合を「独立頂点集合」という。Ore Conditionは2頂点から構成される独立頂点集合に対する次数条件といえる。2018年、MaとYanはOre Conditionで考えた独立頂点集合の頂点数をさらに一般化した次数条件を考えることにより、上記の結果を拡張する定理を証明した。本研究においては、上記の閉路に関する研究結果をもとに、次数条件に改良を加え、指定した個数からなる点素な弦付き閉路が存在するためにはどのような次数条件を満たせばよいかについて研究を行った。点素な閉路に関する先行研究において、次数条件に改良を加え、点素な弦付き閉路を考えることにより、グラフの構造をさらに詳しく理解することが可能となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題の初年度にあたる令和5年度は、弦をもつ閉路(弦付き閉路)に関する研究を行った。本研究においては、グラフがk個の点素な弦付き閉路をもつための非隣接2頂点が満たすべき次数条件(十分条件)について考えた。1963年、CorradiとHajnalは、グラフにk個の点素な閉路が存在するための十分条件として最小次数を考えた。本研究ではこの最小次数条件に改良を加え、従来の結果を改良する点素な弦付き閉路の存在性について研究を行った。 当初の研究計画を大きく説明すると以下の通りである。辺極大なグラフ、すなわち、グラフに辺を1本でも追加すると所望の結果が得られるグラフGを考える。このとき、Gにはk-1個の点素な弦付き閉路が存在し、これらから構成されるGの部分グラフで頂点数が最小のもの(Lとする)を選ぶ。ここで、Gからこの部分グラフLを除去したグラフをH(=G-L)とする。部分グラフLの最小性を維持したままで、Hに含まれる頂点の次数に関する条件等を満たすLを選ぶ。このようにいくつかの条件を満たすように選ばれたLをもとに、頂点数の合計が初めに選んだものより小さな二つの弦付き閉路を再構築することで矛盾を導き、Gにはk個の点素な弦付き閉路が存在することを証明する。上述の研究計画に従って令和5年度は研究を行った。証明では、部分グラフLの最小性やHの満たすべき条件に矛盾するグラフの存在を示すために、次数条件をもとに次数の大きな頂点を見つけることがポイントとなることがわかった。以上の理由により、現在までの進捗状況を上記のように判断した。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、指定要素を含む弦付きパンサイクリックグラフに関する研究を行う。ここで、グラフGの頂点数をnとする。「パンサイクリックグラフ」とは、3以上n以下の各整数値を長さとする閉路をもつグラフのことである。1952年、Diracはグラフがハミルトン閉路を持つための十分条件、すなわち「頂点数が3以上で最小次数がn/2以上であるグラフは、ハミルトン閉路をもつ」を与えた。1960年、OreはDiracの次数条件を「非隣接な2頂点の最小次数和(Ore Condition)」に改良し、より強い結果を証明した。これらの結果は1971年、Bondyによって「Ore Conditionを満たすグラフは、二つの部集合の頂点数がそれぞれn/2 (nは偶数)である完全2部グラフを除いて、パンサイクリックグラフである」という結果に拡張された。これはBondyの超予想である「グラフがハミルトン閉路をもつためのほとんどの十分条件は、いくつかの例外を除き、グラフがパンサイクリックグラフとなるための十分条件にもなる」を補完する結果である。パンサイクリックグラフで考えた各閉路が弦をもつグラフを「弦付きパンサイクリックグラフ」という。2017 年、Cream・Gould・Hirohataは、Bondyの結果をこの弦付きパンサイクリックグラフに拡張した。本研究においては、これらの結果の更なる拡張を目指し、指定要素を含む弦付きパンサイクリックグラフに関する研究を行い、さらに弦を2本以上もつ弦付きパンサイクリックグラフについても研究を行う。先行研究の次数条件を維持したまま、指定要素を含む閉路を考えることにより、グラフの構造をさらに深く理解することができる。
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