研究課題/領域番号 |
23K03211
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
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研究機関 | 総合研究大学院大学 |
研究代表者 |
大槻 久 総合研究大学院大学, 統合進化科学研究センター, 准教授 (50517802)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 間接互恵性 / 動的最適化 / 協力の進化 / 評判 / 進化ゲーム / 進化 / ESS / 協力 |
研究開始時の研究の概要 |
間接互恵性とは、社会的評判を介して協力が個体から個体へと受け渡されていく仕組みを指し、ヒトの協力を説明する機構として重要である。本研究では、間接互恵性においてどのような評判付与ルールと行動ルールが協力を安定に保つかを、動的最適化と進化ゲーム理論の手法を組み合わせて数理的に解析する。特に、評判付与のルールが確率的である場合や、評判値が三値以上である場合に着目し、我々が日常用いている「良い評判」「悪い評判」の基準が、適応の観点からどのように説明されるかを調べ、その理論的基礎付けを行う。
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研究実績の概要 |
本年度は動的最適化の手法を間接互恵性の進化モデルに応用する方法論のreviewを行うことを目標に研究を進めた。まず、評判情報がGoodになるか否かが決定論的には決まらず、確率的に決定するようなモデルの解析を始めた。ところが定式化も済んだところで他グループが動的最適化の手法こそ用いないものの、類似の結果を得る論文を発表したために方針転換が必要になった。そのため年度の後半では、より一般的なフレームワークに動的最適化の手法を用いることができないかを調べることにした。その結果、比較的多くのクラスにおいて動的最適化による定式化が可能だが、特定のクラス、特に利得を特定するのに必要な情報集合に比べて、プレイヤーの持つ情報集合のほうが狭い場合、には動的最適化を必ずしも使えないことを発見した。これらの成果をまとめた論文を現在執筆しており、完成し次第投稿する予定である。 また、これとは別に、間接互恵性における新しいモデルの解析にも着手した。具体的には、従来の研究が他者の評判情報に関して集団全体が一致した意見を持つというpublic assessmentの仮定を置いていたのに対し、新モデルでは個体毎に他者の評判を別々に保持できるprivate assessmentの状況を解析した。直観的にはprivate assessment下では集団が一致した意見を持つことができず、それにより間接互恵性の成立条件はより厳しくなると予測されるところだが、解析の結果、そのような状況でも間接互恵性による協力が進化的に安定な戦略(ESS)として維持されることが分かった。この成果をPNAS誌に公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度目標としていたreview論文の投稿に関しては、他グループの研究成果が出たことによって計画の一部変更が必要になったが、間接互恵性のprivate assessmentモデルの解析では画期的な成果を出しPNAS誌に公表することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
動的最適化と間接互恵性モデルの関係をまとめた論文を仕上げ、投稿することを第一の目標とする。またその後に速やかに多値評判モデルの解析を開始し、従来コンピュータパワーによって解かれてきた問題を動的最適化で分析することにより、解析的な結果を得て、結果の新しい解釈を得ることを目標とする。特に「多値評判情報は二値評判情報よりも協力を促進するか?」という問いに挑む。
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