研究課題/領域番号 |
23K03223
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
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研究機関 | 同志社大学 |
研究代表者 |
近藤 弘一 同志社大学, 理工学部, 教授 (30314397)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2028-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2027年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2026年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | ラックス系の離散化 / 高次近似可積分差分 / 逆固有値問題 / 離散ソリトン理論 / 固有値計算 / 戸田方程式 / ロトカ・ボルテラ方程式 |
研究開始時の研究の概要 |
逆固有値問題とは,指定されたスペクトルデータの一部または全部より行列を復元する問題である.この問題の中に,指定した全ての固有値をもち,かつ指定した行列の構造をもつような行列を構成する方法を求める問題がある.離散ソリトン理論を利用し,有限自由度離散ソリトン理論を確立し,逆固有値問題の新たな解法を開発する.
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研究実績の概要 |
本研究課題では,ソリトン理論に基づく非線形可積分系の離散化を行い,その離散系の漸化式をアルゴリズムとして利用し,新たな応用を目指すものである.可積分系の重要な性質の一つに,ラックス表示がある.これは行列に関する微分方程式であり,その可積分な離散系の導出が課題である.1970年代に,戸田格子方程式に付随する3重対角行列に関する固有値問題と,その行列方程式であるラックス表示が提出されている.この行列を一般の行列に拡張したラックス系が,1980年代に提案されている.ラックス系の整数時間の時間発展は,固有値計算法のための行列変換であるQR変換と等しい,というサイムスの結果があり,QR変換だけではなくLR変換やコレスキー変換などの他の算法の結果を応用して,複数の型のラックス系も1980年代に提案され,これらの系がもつ性質についても多く発見されている.1990年代には,ソリトン方程式の離散化の手法が広田らによって発明された.その結果,戸田方程式の可積分の離散化も提出され,ラックス系の可積分な離散化も提出されている.その行列方程式は,固有値計算法の原点シフト付きのLR変換と等しいことが示された.その後,2000年代には帯行列に関する原点シフト付きLR変換が,拡張型戸田方程式のラックス系と等しいことが福田らにより示されている.LR変換だけではなくQR変換やコレスキー変換の原点シフト付きの固有値計算法が,可積分系であるかが課題として残っている.本年度の成果として,これらの原点シフト付きのLR変換,QR変換,コレスキー変換が,可積分な離散ラックス系であることを示すことに成功した.連続系と離散系では,同じ形の初期値問題の解や,複数の性質をもつことを示すこのに成功した.また,従来の可積分差分の局所離散化誤差は1次であるが,高次の可積分差分化の手法の提案にも成功した.これらの結果を学会発表している.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題では,離散可積分系の応用を探求することが目的である.離散可積分系のうち固有値問題が付属する力学系に限定すると,それらはラックス表示をもつ必要がある.このとき,複数の離散ラックス系のうち,可解となり得る方程式を選び出す手法の確立が,未解決な課題であった.連続のラックス系においては,初期値問題を解くために必要な条件は,既に1980年代に提示されていた.本年度の成果により,離散ラックス系について,初期値問題を解くために必要な条件を提示することに成功した.連続系が可解となる条件に比べて,離散系がみたすべき条件の種類が増加することを示した.これらの条件をみたした離散ラックス系が,本研究課題で扱うべき離散力学系の全てであるといえる.さらに,これらの系についての応用を探求することが次なる課題といえる.また,本研究課題のスタートラインは,可積分差分である.可積分差分の最古の文献は,ロジスティクス方程式の差分化である森下差分である.刻み幅の大きさにかかわらず,離散系の解軌道が,連続系の軌道に沿うことが特徴である.しかしながら,離散系の解の連続系に対する局所離散化誤差は1次である.連続系と離散系の解のグラフ間の距離は,十分に小さいとはいえない.離散化積分系において,この課題は今までに解決することはなかったが,本年度の成果により,ロジスティクス方程式の高次の可積分差分の導出に成功した.指数関数をパデ近似により得られる有理関数は高次近似と見なされるので,その関数を利用して可積分差分を行う手法である.この手法は,汎用性が高い手法であり,ロジスティクス方程式に限らず,他の連続な可積分方程式に適用できる可能性が高く,これらの導出が次なる課題といえる.さらには,得られた離散系の別の分野への応用の探求が課題となる.
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今後の研究の推進方策 |
本年度の成果のまず一つは,LR型,QR型,コレスキー型のラックス系についての可積分な離散化と,それらがもつべき条件の定式化である.この成果は,複数の学会において発表を行ったが,まだ論文投稿には至っていない.次年度の前半においては,この成果の論理的な誤謬がないことを確認しつつ,論文投稿の準備を行う.次年度の後半以降においては,得られた離散可積分系の応用について探求する.まずは,帯行列の固有値問題に付随する戸田型の離散ラックス系が対象となる.また,本年度の成果のもう一つは,ロジスティクス方程式の高次の可積分差分化である.こちらの成果も,複数の学会において発表を行ったが,まだ論文投稿には至っていない.こちらも同様に,次年度の前半中に論文投稿まで終わらせる予定である.また,次年度の後半以降には,開発した高次近似可積分差分法が,他の可積分な非線形微分方程式に適用可能かの研究を行う.さらには,得られた離散可積分系の応用を探求する.
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