研究課題/領域番号 |
23K03231
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分12040:応用数学および統計数学関連
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研究機関 | 奈良女子大学 |
研究代表者 |
村井 紘子 奈良女子大学, 自然科学系, 准教授 (40456843)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2026年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 折り紙 / 剛体折り / 位相幾何学 / 結び目理論 / folded state / folding motion / 平坦折り |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,折り紙の大域的な構造を位相幾何学の手法を用いて調べる.数学的には(折り紙)展開図とは向き付け可能な曲面内の領域Rと,Rに埋め込まれた1次元複体Cの組として定式化され,CでRを折ることにより得られるR^3内の立体図形を折り紙というが,本研究では,折り紙研究に位相幾何学の手法を取り入れることにより,1)幾何構造等を用いて剛体折り可能な折り紙テッセレーションを系統的に構成する方法を与えること,2)必ずしも平面領域から折ってできるとは限らない折り紙に関する研究を位相幾何学の用語等を用いて定式化することを中心とした課題に取り組み,折り紙理論の新しい展開を目指す.
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研究実績の概要 |
本研究の目的は大きく2つに分けられる.目的1は幾何構造等を用いて剛体折り可能な折り紙テッセレーションを系統的に構成する方法を与えることであり, 目的2は必ずしも平面領域から折ってできるとは限らない折り紙に関する研究を位相幾何学の用語等を用いて定式化し,理論を構築することである. 「剛体折り可能」とは直感的には各面が硬いパネルのようなものでできている折り紙として実現できることを表す言葉であるが,数学的な定式化が十分になされているとは言えないという認識のもと,2023年度はこの概念の整備に取り組んだ.具体的には折り紙展開図が「剛体的折り状態をもつ」かどうかという問いと,剛体的折り状態を持つ場合は「剛体的変形可能である」か,という問いの二つに分ける必要があることを指摘した. 目的2に関して,3次元ユークリッド空間内の向き付け可能曲面Pからユークリッド空間への折り状態(folded state)f(P)と,Pからf(P)への折り動作(folding motion)に対し, Pが単連結のときは任意の折り状態に対して折り動作が存在することが知られている. そこで2023年度は,単連結でない領域から得られる折り状態に対する折り動作の存在性について研究を行った.具体的には折り紙が自己接触しないfreeと呼ばれる連続変形について考察し,Pが円環に同相な閉集合の場合に,Pからf(P)へのfree な折り動作が存在しない例があることを,Pの境界が成す絡み目の不変量を用いて示した.なおこの例は1の研究で扱う「剛体的折り状態をもつ」が,平坦な状態からの「剛体的変形可能でない」折り紙の例にもなっている. またPが平面上の円環に同相な閉集合の場合に,Pからf(P)へのfreeとは限らない折り動作が存在するための十分条件について研究を行った.特にPが“良い”多角形的円環の場合には部分的な結果が得られた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究は折り紙研究に位相幾何学の手法を取り入れることにより,折り紙理論の新しい展開を目指すものである. 以下2つの研究に分けて進捗状況を述べる. 1つ目の研究として,剛体折り可能な折り紙テッセレーションの系統的な研究を行うために必要となる概念の定式化を行った.特に折り紙展開図が「剛体的折り状態をもつ」かどうかという問いと,剛体的折り状態を持つ場合は「剛体的変形可能である」か,という問いの二つに分けて議論する必要があることを指摘した.またカッティングマシンを利用して模型を作成し,折り紙展開図の変形についての実験を行った.この結果折り紙展開図の構成に関する有益な情報が得られた. 2つ目の研究では,折り紙に関する研究を位相幾何学の用語等を用いて定式化し,理論を構築することに取り組んだ.Pが円環に同相な閉集合の場合に,Pからf(P)への折り動作が存在しない例があることを,Pの境界が成す絡み目の不変量を用いて示した.この研究は位相幾何学を折り紙数学に適用したものであり,折り紙研究に新しい手法を導入したと評価できる.さらにこの例は1の研究で扱う「剛体的折り状態をもつ」が,平坦な状態からの「剛体的変形可能でない」折り紙の例にもなっており,「剛体的折り状態をもつ」と「剛体的変形可能である」という概念に差があることを明らかにしたものである.この内容については研究代表者が指導する大学院生と共同で国際研究集会で発表し,現在論文執筆中である. またPが平面上の円環に同相な閉集合の場合に,Pからf(P)へのfreeとは限らない折り動作が存在するための十分条件について研究を行った.特にPが“良い”多角形的円環の場合には部分的な結果が得られた. 研究期間中に研究代表者が骨折し3ヶ月に渡り移動が困難な状態になったため,予定していた研究発表・研究交流の一部を取りやめたが,概ね想定した通りの研究が進んでいると評価している.
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今後の研究の推進方策 |
2023年度はユークリッド平面内の領域Pからユークリッド空間への折り状態f(P)と,Pからf(P) への折り動作を対象とする研究を行った.具体的にはPが平面上の円環に同相な閉集合の場合に,Pからf(P)へのfreeとは限らない折り動作が存在するための十分条件について研究を行い,特にPが“良い”多角形的円環の場合には,部分的な結果が得られた.すなわちPを,Pの内側の境界の任意の近傍内に移すような折り動作が存在することが示された.そこで2024年度はこの研究を推し進め,Pからf(P)への折り動作が存在するための必要十分条件を得ることを目指す.また同時に,Pが平面上の一般の円環の場合についての研究も行いたい.さらにより複雑な曲面に対しての研究も行いたいが,その第一段階としてPが3次元ユークリッド空間内の向き付け不可能な曲面の場合の最も簡単な曲面であるメビウスの帯の折り状態について研究を行いたい.以上の研究を進めるためにカッティングマシンを用いての実験を行うとともに国内外の研究集会に参加し,自身の結果について発表するとともに最新の研究についての情報を収集する.
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