研究課題/領域番号 |
23K03247
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
松本 剛 京都大学, 理学研究科, 助教 (20346076)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,900千円 (直接経費: 3,000千円、間接経費: 900千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 乱流のLagrange速度相関 / 乱流の2粒子相対拡散 / 流体乱流 / 乱流輸送 / 異常拡散 |
研究開始時の研究の概要 |
流れは様々な物を運ぶ。流れは殆どの場合、速度が乱雑な状態である乱流で、乱流が物を運ぶ能力は液体や気体を構成する分子の運動が引き起こす拡散のそれと比べると異常に高い。この異常性の法則は十分には確立していない。こうした法則は、地球大気による熱の輸送といった問題と関連があり、重要である。 本研究では確立の困難さの原因が乱流速度がもつ長時間の相関であると考える。この速度は、流れに乗った観測者が測る速度(ラグランジュ速度)で、短い時間では大きく変動しない。我々は乱流の数値シミュレーションを行い、ラグランジュ速度の2時刻相関関数を用いて相関を明らかにすることで、乱流輸送の異常性の法則の確立を目指す。
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研究実績の概要 |
水に砂糖などを溶かすときには、水をかき混ぜて乱流をおこすことで早く溶けるようになる。この日常的に誰もが行っていることは、乱流の特徴のひとつである高い混合能力を利用したものである。こうした混合や輸送の能力を測る方法は様々あるが、乱流研究での有力な方法は次のものである。乱流によって流される粒子を2つ考えて、最初にこの2粒子間の距離が小さいものとする。次に、時間とともに流される2粒子間の距離がどのように大きくなっていくか?を調べる。およそ100年前に最初の観測実験がおこなわれ、2粒子間の距離は時間の3乗で増加すると結論された。この3乗という指数は他の系と比べてとても大きく、乱流の著しい特徴と考えられている。しかし、現代の数値シミュレーションや実験室実験において、時間の3乗で増加することは明確に観測されない。 本研究では、2粒子の速度(Lagrange速度)の間になんらかの非自明な相関があり、それが原因となって3乗則からのズレが生じているのではないかと予想している。今年度は、数値シミュレーションで乱流によって流される多数の粒子を追跡し、その速度の相関を精度よく決定するための条件を探った。この結果、粒子追跡に必要な速度の補間についての精度の検証を行い、かなりの程度滑らかさを保証するもの必要であることが判明した。また、予備的な速度相関の計算を行った結果、相似則が示唆されている。さらに、3乗則からのズレをもたらす原因の一つに2粒子間の最初の距離もあげられる。この初期距離と速度の相関がどのように関係するかについての理論的な考察もおこなった。この結果、初期距離を小さくとる場合に速度相関の関数型によって2粒子間の距離が影響をうけることも判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究実績の概要でのべたように、粒子追跡に必要な速度の補間の精度について、当初の予想よりも高いものが必要であることが今年度の研究で判明した。2次元乱流を対象とした我々の先行研究では速度の補間の精度は最低次のもので十分であった。しかし、本研究では、2粒子間の初期距離依存性を系統的に研究するためLagrange速度相関をフーリエ空間でも考察することとした(我々の先行研究ではフーリエ空間では考察しなかった)。この結果、精度の高い補間法が必要になった。
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今後の研究の推進方策 |
より高次の速度補間法を実装してフーリエ空間でのLagrange速度相関の関数型を精度よく数値計算する。とはいえ、精度と計算時間のトレードオフが問題となるので、ある程度の試行錯誤を行い、妥協点をさぐることが必要となる。フーリエ空間および実空間での速度相関のきれいなデータが得られれば、あとは当初計画どおりに研究を推進する。
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