研究課題/領域番号 |
23K03262
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13010:数理物理および物性基礎関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
福本 康秀 九州大学, マス・フォア・インダストリ研究所, 教授 (30192727)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
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キーワード | 電磁流体 / 南部括弧 / クロス・ヘリシティ / カシミール不変量 / トポロジカル不変量 / ネーターの定理 / 流体粒子ラベル付け替え対称性 / 発散対称性 / ケルヴィン・ヘルムホルツ不安定 / 圧縮性 / 非正準ハミルトン力学系 / 燃焼火炎面 |
研究開始時の研究の概要 |
流体では、薄い層状領域で速度や密度などが大きく変化する流れ現象がひろく存在し、しかも、その層状領域が流れ全体を支配することが多い。圧縮性は層状領域の安定性を抜本的に変えてしまう。南部括弧を援用して、圧縮性(電磁)流体方程式に対する既存の非正準ハミルトン構造の不備を取り除き、圧縮性流体の波のエネルギー公式を導く。負のエネルギーモードの同定によって、接線不連続面や予混合燃焼火炎面のゆらぎの成長に対する音波の効果を解き明かす。
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研究実績の概要 |
理想中性/電磁流体は無限自由度ハミルトン力学系をなすが、の発展方程式はリー・ポアソン方程式であり、トポロジカル不変量であるカシミール不変量の存在を許す。総質量、クロス・ヘリシティ、総エントロピーと磁気ヘリシティの4個で3次元理想電磁流体のカシミール不変量が本質的に尽くされると考えられている。南部括弧はリー・ポアソン括弧の中に隠れているカシミール不変量を顕在化する。4個のカシミール不変量を用いて、理想電磁流体方程式のリー・ポアソン括弧を南部括弧に書き換えることに成功した。さらに、総質量を除く3個カシミール不変量のみを用いてコンパクトな南部括弧表現を導いた。この表現は、冗長性が少ないことはもちろん、すべての係数が定数であるという望ましい性質を備えている。 逆に、これらの南部括弧から誘導されるリー・ポアソン括弧は、元の括弧とは一致せず、流体粒子のラグランジュ変位を変数とする項が付け加わる。この修正されたリー・ポアソン括弧によってはじめて、クロス・ヘリシティが定義通りカシミール不変量となり、4半世紀にわたる懸案が解決できた。 理想電磁流体のカシミール不変量が4個で尽くされることを示すために、ラグランジュ的記述による変分原理の枠組みにおけるネーターの定理によって、トポロジカル不変量を導いた。流体粒子ラベル付け替えは3次元理想電磁流体の作用を不変にする対称性であり、これに対応する積分不変量がクロス・ヘリシティに限ることを証明した。従属変数を増やすことによって中性バロトロピー流体におけるヘリシティと同じ振る舞いする積分が2個知られている。これらは、発散対称性を組み込むことで、同一のネーターの定理の枠組みでトポロジカル不変量と特徴づけることができる。クロス・ヘリシティの実在性を確認する過程で、従来見落とされてきたカシミール不変量表現を発見した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
従来知られている理想電磁流体に対する南部括弧は、カシミール不変量ではない流体ヘリシティを用いているなど不十分なものであったが、カシミール不変量のみで書き下すことができた。4個のカシミール不変量のうち3個のカシミール不変量だけを用いることによって、冗長性をそぎ落とした、しかも定数係数の南部括弧を得た。 中性流体や電磁流体のトポロジカル不変量として、様々な形の積分量が知られている。作用の変分対称性のみならず発散対称性を援用することによって、知られているトポロジカル不変量をネーターの定理からすべて導くことに成功した。しかも、初期の位置から現在の位置へのラグランジュ写像ではなく、この逆写像であるラベル関数を変数にとることによって、変分操作を大きく簡略化できた。
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今後の研究の推進方策 |
アーノルドの定理によれば、非圧縮理想オイラー流の定常状態は、等循環摂動に関する運動エネルギーの極値として特徴づけられる。Kreinのハミルトン的スペクトル理論によれと、定常流が不安定であるための必要条件は、2個の攪乱モードが縮退することであるが、これらの攪乱のエネルギーの符号が異なるか、両方が0である必要がある。Kreinの理論、特に、攪乱のエネルギーは等循環攪乱に限定することによって正確に定式化できる。等循環攪乱を圧縮性、バロクリニック流体、そして電磁流体に拡張して、定常解の特徴づけを行い、攪乱のエネルギーを計算する。渦が有限に広がっている場合は直ちに実行可能であるが、渦層のように渦度が曲面上に局在する場合の計算は一筋縄ではいかない。有限幅の渦層の特異極限をとるアイデアなどを試みながら、異なる密度の圧縮性流体を隔てる渦層や磁気渦層に立つ波のエネルギーの計算を実行する。 攪乱のエネルギーの観点から、渦層のケルヴィン・ヘルムホルツ不安定性の圧縮性による安定化、さらに安定化された渦層の重力や表面張力による不安定化という直感的には受け入れ難い現象を解明する。
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