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離散量子系の厳密なマスター方程式と散逸過程

研究課題

研究課題/領域番号 23K03268
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分13010:数理物理および物性基礎関連
研究機関早稲田大学

研究代表者

中里 弘道  早稲田大学, 理工学術院, 教授 (00180266)

研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
キーワードマスター方程式 / 開放系の量子論 / 熱浴の量子論 / 厳密マスター方程式
研究開始時の研究の概要

量子力学は閉じた系に対してユニタリーな時間発展をもたらす.しかし実際の力学系はけっして孤立系とは考えられず,何らかの外部環境系の作用(擾乱)の下に置かれている.このような開いた力学系の時間発展を支配しているのがマスター方程式であり,一般に散逸あるは緩和といった現象を記述している.本研究では,開放量子2準位系に対する厳密マスター方程式を導出し,その時間発展,特に長時間極限での振る舞いを解析的に議論する.このことを通して,マスター方程式導出に際して通常導入される種々の仮定の有効性あるいは限界を明らかにするとともに,平衡状態の有無あるいは平衡状態への漸近に関して新たな知見を見出す.

研究実績の概要

量子力学は閉じた系に対してユニタリーな時間発展をもたらす.しかし実際の力学系はけっして孤立系とは考えられず,何らかの外部環境系の作用(擾乱)の下に置かれている.このような開いた力学系の時間発展を支配しているのがマスター方程式であり,一般に散逸あるは緩和といった現象を記述している.本研究では,開放量子2準位系に対する厳密マスター方程式を導出し,その時間発展,特に長時間極限での振る舞いを解析的に議論する.このことを通して,マスター方程式導出に際して通常導入される種々の仮定の有効性あるいは限界を明らかにするとともに,平衡状態の有無あるいは平衡状態への漸近に関して新たな知見を見出す.
本研究では,量子2準位系がボソン場の集合からなる環境と回転波近似で散逸的に相互作用する場合を考え,任意の熱平衡分布にある初期環境系のもと,これ以外の特別な条件や近似を施すことなく,量子2準位系に対するマスター方程式を時間に関する畳み込み積分を含まない形で厳密に導出した.まず量子2準位系に対する動的写像,すなわち,任意時刻の縮約密度行列を任意の初期時刻密度行列と時間発展演算子の期待値の関数として表わした.環境との相互作用として回転波近似を採用したおかげで動的写像は比較的容易に求めることができた.時間依存性は後者の関数が担っているので,得られた縮約密度行列の時間微分は,初期時刻の縮約密度行列と後者の時間微分で表される.前者を動的写像の逆写像を使って当該時刻の縮約密度行列で表し直すことで,量子2準位系に対するマスター方程式が時間に関する積分を含まない形で厳密に求まった.従来は,初期環境系が温度零度の熱平衡分布(すなわち真空)の場合に限定されていたが,本研究ではこれを任意の初期熱平衡分布に拡張することができた.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

いわゆるスピン・ボソン系における厳密なマスター方程式の導出は本研究課題の最終目的の前提を成すものであり,これまでのところは計画通りの進捗である.

今後の研究の推進方策

スピン・ボソン系の厳密マスター方程式の導出に続いて,この系の長時間極限を調べ,系が平衡に達するのか否か,平衡分布があるとすればそれはどのような分布となるかという本研究の本題に挑む.これは量子論の枠組みで熱平衡現象がどのように理解され得るかという本質的課題への挑戦に他ならず,長年の先行研究でも,素朴な物理的イメージに沿うような結果を具体的な量子力学的模型から解析的に示した例はほぼ見当たらない.
本研究ではこの問題に,従来あまり正面から考えられてこられなかったと思われる視点,すなわち,環境系としての熱浴に対して量子論を展開することで新たな知見を得ようとするものである.特に,初期状態に依存しないのが平衡状態の定義そのものであるから,動的写像が特異となる,すなわち逆写像が存在しないことを平衡状態到達の指針とし,これに基づいて,まず熱浴としてのボソン系の縮約密度行列の長時間極限を評価する.この評価は一般に演算子の極限を取り扱うことになるため適切な極限操作が必須と予想されるが,素朴に長時間極限におけるエネルギー保存則の成立を仮定するだけで,熱浴ボソン系に対する時間発展演算子の構造は比較的単純な形となると見込まれている.演算子極限の問題はひとまず置いて,まずはこの場合に熱浴ボソン系ならびにスピン系の平衡状態の存在の有無,存在する場合にはどのような平衡状態となるかを調べる.

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (1件)

すべて その他

すべて 国際共同研究 (1件)

  • [国際共同研究] University of Bari/University of Palermo(イタリア)

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書

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公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

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