研究課題/領域番号 |
23K03273
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
都倉 康弘 筑波大学, 数理物質系, 教授 (20393788)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 測定による熱流 / GKSL量子マスター方程式 / 量子測定 / 量子制御 / 非平衡量子系 |
研究開始時の研究の概要 |
近年実験的に実現が進んでいる高度に制御された量子力学に従う物理系が対象である。この量子系の状態を確認しさらには制御する為には量子系を巨視的な測定器や制御システムと結合させる必要がある。特に微小な量子系は非定常、あるいは非平衡定常状態にあり、この系を詳しく調べることは非平衡統計力学、量子熱力学に関する基礎物理の理解の深化を可能とする。本研究は、非平衡状態にある量子系に対する一般的な量子測定の効果とコヒーレント/インコヒーレントな状態制御について包括的に理論的な理解を与えることを目的とする。特にマルコフ的な環境(測定系)と非マルコフ的な環境(測定系)の違いを明らかにすることに注力する。
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研究実績の概要 |
課題(A)について複数のボソン熱浴と結合した非平衡定常状態にある注目量子系を量子連続弱測定する問題をGKSL量子マスター方程式に基づき解析を進めた。とくに注目したのは、測定器から注目量子系に流れ込む熱流の向きと大きさである。注目量子系が二準位系の場合には、測定器から注目量子系へ流れ込む熱流は必ず正であること、またその大きさは、二準位系のブロッホ球の赤道上の測定基底の場合に最大になることを明らかにした。また、一般の複数準位量子系の場合にもそのエネルギー固有状態の重ね合わせを測定基底とする場合について、熱流の向きと大きさを導出した。特に、三準位系で温度の異なる二つの熱浴と結合した系では、非平衡定常状態が「反転分布」となり、この場合は熱流の向きが逆になる。以上の結果を国際論文誌Phys. Rev. Research に出版した。またこのモデルを拡張し、測定結果に応じたユニタリ・フィードバックを行う過程を考察し、その場合の注目量子系に加わる熱流+仕事について一般的な表式を導出した。 課題(B)については明示的に注目系との相互作用の影響を保持した後に再び再度注目系と相互作用するタイプの熱浴のモデルの考察を進めた。特に、熱浴が一方向に励起が伝播する系(例えば量子ホール端状態や後方散乱が無視できるマイクロ波伝送路など)では簡潔な解析が可能となる。また、解析に用いるKeldysh 形式の解析で通常仮定されている定常状態への一様な緩和の条件についても文献調査により検証を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
課題(A)については計画通りに、量子系の量子連続測定の一般的な性質を明らかにできた。また、その結果を国際会議や学術論文に発表することができた。それに加えフィードバック制御についても定式化を完了しており、予定よりも進捗は進んでいる。一方課題(B)についてはモデルかに着手した段階であり少し遅れていると判断されるが、その解析に必要なKeldysh形式の解析についての検討も並行して進めることができている。以上総合的にみておおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
課題(A)については、これまでの解析をさらに拡張し熱流の揺らぎやフィードバック制御の忠実度などの評価を進め、さらには確率熱力学との関係を明らかにしていく。また、現在考察している注目系は環境との相互作用は弱く、また測定器との結合も弱い条件に限定している。それらを強結合条件にした場合にどのような違いがあるかについても検討を進めていく。 課題(B)は、設定したモデルに基づき非マルコフ性の特徴を明らかにするとともに、そのような系に対する量子連続測定の性質を定量的に調べる予定である。
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