研究課題/領域番号 |
23K03276
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 電気通信大学 |
研究代表者 |
斎藤 弘樹 電気通信大学, 大学院情報理工学研究科, 教授 (60334497)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
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キーワード | 冷却原子気体 / 超固体 / 量子渦 / スピン / 磁性 / 超流動 / ボース・アインシュタイン凝縮 |
研究開始時の研究の概要 |
固体は周期的な構造を持つ状態である。一方、液体や気体は、外力がかかると自由に流れることができる。この両方の性質を併せ持った「超固体」と呼ばれる状態が最近実現された。これは周期的構造が不動のままにあるにも関わらず、その中を質量流が流れることのできる興味深い状態である。しかしながら、これまで実現されている超固体状態はいずれも寿命が短く、超固体特有の動的現象を直接観測するには至っていない。これに対して本研究は、従来の単一成分からなる系ではなく、複数の成分からなる系を研究する。そうすることで、水の中に油の液滴が並んでいるような状態となり、長寿命が実現できると期待される。
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研究実績の概要 |
「超固体」とは、結晶のように空間的な周期構造を持ちつつ、その周期構造は不動のまま超流動流が流れることのできるような状態を言う。このような状態が2019年に原子気体のボース・アインシュタイン凝縮体において実現された。本研究の目的は、これを多成分のボース・アインシュタイン凝縮体に拡張することである。 今年度の研究では超固体状態の多成分系への拡張という点で大きな進展があった。スピン自由度を持つ原子のボース・アインシュタイン凝縮体は多成分系である。従来、ボース・アインシュタイン凝縮体の液滴状態はスピン自由度が外部磁場によって凍結された状態、すなわち一成分系がこれまで考えられてきた。これに対して、本研究では外部磁場が非常に弱くスピン自由度を保った系を考察した。さらに原子が持つ磁性による相互作用が、その他の相互作用よりも強く支配的な場合を考えた。これは近年わが国で初めて実現されたユーロピウム原子のボース・アインシュタイン凝縮体がこれに相当する。 数値的または解析的な研究により、基底状態はドーナツ型の液滴状態であることを明らかにした。これはドーナツの輪に沿って磁化が循環した状態となっており磁気渦と呼ばれている。このような磁気渦を持った自己束縛状態が流体で実現できることを見いだしたのはこれが初めてである。さらに、この系をシート上の細長い空間に閉じ込めると、ドーナツ型の液滴状態が周期的に並んだ状態が基底状態であることを明らかにした。この状態は周期性を持ちつつ超流動性も持っており、超固体状態であると言える。従来のように単純な形の液滴が並んでいるのではなく、磁気渦という構造を持った液滴が並んでいる極めて新奇な超固体状態である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初の計画では、二成分系を重点的に調べる予定であった。しかし、二成分系については昨年から今年にかけて、いくつかの研究が既に他グループによって行われてしまい、スピノル系(3成分以上の多成分系)に研究の方向性を変更した。これが功を奏し、上で述べたドーナツ型の磁気渦状態の発見や、複数の磁気渦状態がつらなった新奇な超固体状態の発見につながった。これは当初想定していた以上の興味深い結果であり、当初の計画以上に進展していると判断することができる。
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今後の研究の推進方策 |
前項で述べたように、当初予定していた二成分BECの研究からやや方針を変更し、原子のスピン自由度を取り入れた多成分BECの研究を行っており、今後もこの方策で研究を進める。多成分BECへと研究対象を広げたことにより、磁気渦を持ったドーナツ型の液滴状態からなる超固体状態の発見に至った。今後は、この状態についてさらに調査する予定である。例えば、この超固体状態に超流動流がどのように流れるか、あるいは、超固体状態の集団励起などについて研究を行う予定である。
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