研究課題/領域番号 |
23K03277
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
榎本 勝成 富山大学, 学術研究部理学系, 准教授 (50452090)
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研究分担者 |
宮本 祐樹 岡山大学, 異分野基礎科学研究所, 研究准教授 (00559586)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | レーザー分光 / 低温分子 / 超低膨張エタロン / 青色半導体レーザー / 一酸化鉛 / バッファーガス冷却 / 分子分光 / 半導体レーザー / エタロン |
研究開始時の研究の概要 |
青色半導体レーザーを用いた高分解能分子分光システムについて、可搬性と自動化を追求し、分光測定の大幅な効率化を進めるとともに、分光システムを持ち込んだ共同研究も展開する。半導体レーザーを用いることで、軽量小型の光源システムを構築できる。また、複線化した超低膨張エタロンを用いることで、高価な波長計によらずに光周波数を高精度に決定できる。半導体レーザーの波長掃引には、長年の経験を基にした操作のコツを自動化システムに組み込む。これを用いて、PbOやTaNなどの分子のレーザー分光を10 MHzの絶対周波数精度で高効率に進めて行く。
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研究実績の概要 |
本年度は、青色半導体レーザーと超低膨張エタロンを用いて、高精度・高分解能のレーザー分光をPbOに対して行った。400-450nmの領域で、角運動量の分子軸射影Ωが1の電子状態について調べ、新たな電子状態を同定することができ、これをc1状態と命名した。この状態は、第一原理計算では存在が予測されていたものの、実験的にはこれまで観測例がなかったものである。このc1状態は振動間隔などの面でa1状態と似ており、両者の間には比較的強い相互作用が存在するため、多数の振動状態にわたる大域的な摂動が観測された。この相互作用による状態の混合は、超微細構造分裂の変化に明瞭に表れ、それを起点として観測された振動準位や回転定数の摂動を解析した。その結果、この相互作用の原因は、a1状態とc1状態のポテンシャル曲線の、内側の斥力部分での交差によるものと推察された。このc1状態は、b0-状態とも振動間隔が似ており、過去にb0-状態にアサインされたバンドの一部は、実はc1状態である可能性が高い。また、このc1状態は電子の永久電気双極子モーメントの探索において、有望な状態である可能性が高い。これらの成果について、論文をJ. Chem. Phys.誌に投稿した。 また、超低膨張エタロンシステムを新たに1台作成した。このエタロンは既存のものと、わずかに自由スペクトル領域が異なり、この2台の共鳴線を比較することでバーニアの原理によりレーザー周波数を波長計なしでも決定できる。こちらは今後、ゼロ膨張温度の決定などを行い、分光システムに組み込んでいく。 また、分担者が中心となって、フタロシアニンなどの大型分子について、ヘリウムバッファーガス冷却による低温分子のレーザー分光を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
バッファーガス冷却によるPbOやフタロシアニンなどの低温分子のレーザー分光実験は順調に進展し、PbOの新たな電子状態の観測といった重要な成果が得られた。青色半導体レーザーによる分光システムの改良については、新たな超低膨張エタロンの購入と、高真空・温度安定化システムの作成を行ったが、昨今の物価高騰により、当初の予定にあった2つのエタロンを1つの超低膨張スペーサーで作るという設計では予算オーバーとなったため、1つのエタロンだけを新たに作成し、既存のエタロンと組み合わせて比較することになった。これにより、分光システム全体の軽量化は難しくなった。
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今後の研究の推進方策 |
新たに組み上げた超低膨張エタロンを分光システムに組み込み、波長計なしでもレーザー周波数が決定できるようにする。その過程で分光システムの自動化を進めていく。PbOのc1状態の低い振動準位の測定は重要であり、観測領域を長波長側に伸ばして測定を進めて行く。
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