研究課題/領域番号 |
23K03285
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
魚住 孝幸 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 教授 (80295724)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
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キーワード | ベイズ推定 / X線分光解析 / 強相関電子系 / ハミルトニアン推定 / X線分光 / モデル選択 / 最大事後確率推定 |
研究開始時の研究の概要 |
光電子分光や共鳴X線発光分光をはじめとするX線分光法は,物質の電子状態を調べるための強力な研究手法であり,その成果は新しい電子材料の開発に結び付きます.その際,実験スペクトルを理論的に解析することで,電子状態の情報を適切に抜き出す必要があります.本研究では,従来の解析手法に「ベイズ推定」と呼ばれる統計的手法を組み合わせることで,理論解析手法を高度化し,今後の電子状態研究の発展に貢献します.
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研究実績の概要 |
本研究計画の主課題は,X線内殻分光スペクトル解析にベイズ推定環境を構築・導入することで,客観的かつ合理的に電子状態情報を引き出す解析手法を実証・提案することである.初年度は,MO6型のクラスタ模型を基本として,総合的なスペクトル解析環境を構築する計画であった.実績の概要は以下のとおり. ベイズ推定環境では,新しいモンテカルロ(MC)サンプリング手法を含む計算環境をPythonにより実装した.MCサンプリングで問題となる,極小トラップによるサンプルの歪みを回避するため,最適値近傍での一様サンプリングと再重みづけを組み合わせた手法により各種パラメータの評価を効率的に行うというもので,手法の提案を含めた成果を2023年秋の日本物理学会において発表した. スペクトル計算に関しては,第一原理計算で得られた部分状態密度から直接不純物アンダーソン模型を構築する手法を考案し,2023年秋の日本物理学会において発表した.この手法は,従来のバンドマッピングの手続きを必要としないため,通常の結晶のみならず,並進対称性のないナノ結晶や表面吸着原子なども対象とすることができ,24年度以降の研究計画に関わる重要な成果であると考える.また,上記ベイズ推定環境に合わせる形でスペクトル計算コードをPython + Fortranで再整備した.可読性と計算スピードを両立させたことで,24年度以降の研究実施に向けてよい環境構築・整備できたものと考える.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画初年度である23年度の予定はMO6型のクラスタ模型を基本として,総合的なスペクトル解析環境を構築することであった.当初予定にはない,以下の3項目での大きな進展があり,計画は順調である. ベイズ推定環境では,「概要」に述べたように,一様サンプリングと再重みづけを組み合わせた,効率的なMCサンプリング法を考案し,日本物理学会で発表を行った.この手法はレプリカを必要としない分,従来のレプリカ交換法よりも効率的であり,当初の計画に含まれていたアイデアである.しかしながら,その後に主成分分析の視点を取り入れた,さらに効率的な手法を新たに考案し,Pythonによる実装と予備計算を経て実践レベルのベイズ推定環境を構築することができた.これは当初予定にはなかった重要な成果である.(論文発表準備中) また,スペクトル計算環境に関しては,「概要」に述べたように,部分状態密度から直接不純物アンダーソン模型を構築する手法を考案し,一連の手続きを効率的に行うPython環境を構築した.(論文発表準備中)これは当初の計画には含まれない成果であり,第一原理計算の利用による,より洗練されたスペクトル計算モデルとベイズ推定を組み合わせた解析を可能にする. 上記のベイズ推定環境とX線スペクトル解析環境を統合した環境を構築するため,基盤となるスペクトル計算用のコードを新たに実装・整備した.Pythonによる可読性とFortranによる高速計算を両立させたものであり,上述の新手法を取り入れたベイズ推定環境と非常に相性がよい.今後の計画を効率的に進める上で非常に重要な成果である.
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今後の研究の推進方策 |
「進捗状況」に述べたように,23年度はベイズ推定・スペクトル計算環境構築の点でともに大きな進展があった.ベイズ推定では,主成分分析の視点を取り入れた,効率的なMCサンプリング環境を新たに考案・実装し,実践レベルの環境を構築した.また,スペクトル計算では,部分状態密度から直接アンダーソン模型を構築する手法を考案・実装したこと,上記ベイズ推定コードに合わせて,スペクトル計算コードを Python + Fortranで新たに実装・整備したことで,当初,本研究計画で念頭にあった計算環境以上のものが構築できたと考えている.今後は,これをさらに拡張・発展させながら効果的に研究計画を進めていく. 24年度は上記の計算環境を活用して,実際の実験スペクトルの解析(MAP推定,パラメータ分布推定,ハミルトニアン推定)を行い,また,物質ごとのキーパラメータを選択し,モデル選択の手法によりそのパラメータを決定するなどの課題を進めたいと考えている.
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