研究課題/領域番号 |
23K03288
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
楠瀬 博明 明治大学, 理工学部, 専任教授 (00292201)
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研究分担者 |
速水 賢 北海道大学, 理学研究院, 准教授 (20776546)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 多極子基底 / スピン軌道相互作用 / カイラリティ / フォノン / 第一原理電子状態 / フロッケ理論 / 円偏光電磁場 / 多極子 / 電気トロイダル単極子 / 絶対不斉合成 |
研究開始時の研究の概要 |
カイラル物質は純粋回転の対称性のみを持つ系であり、多様な交差相関応答が発現する。しかし、カイラリティを特徴づける微視的変数はこれまで議論されてこなかった。申請者はこの微視的変数が電気トロイダル単極子であることを見出した。そこで本研究では、電子状態、格子振動、電磁場などの外場のそれぞれについて、電気トロイダル単極子を具現化し、多様な交差相関応答の発現機構を明らかにする。典型物質のテルル、水晶などに対して、電子模型を構築し、電気トロイダル単極子を具現化する。フォノン・電磁場と電子系の電気トロイダル単極子を介した結合を導き、カイラリティの外場制御法を見出すことを目指す。
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研究実績の概要 |
固体結晶中の多様な電子自由度を多極子の自由度を用いて整理することで、交差相関物性を系統的に理解する試みにおいて、電子系のハミルトニアンを多極子基底で展開する一般的手法を開発した。また、線形及び非線形応答において、その発現に必須のモデルパラメータを系統的に特定する手法を開発し、多極子基底で 表したハミルトニアンと併用して、各種物性応答の微視的起源を明らかにする一般的な処方箋を与えた。また、これらの基底を視覚的に表現する描画ツールを開発し、一般公開している。 以上の知見を基に、カイラル物質を量子論の観点から理解することを目標にして、以下のような成果を得た。カイラル系の典型物質Teに手法を適用し、カイラリティに関与するミクロな電子自由度を特定し、電場と格子回転のような極性と軸性を変換する新しい応答現象を見出した。カイラリティを量子論的に理解するための概要をまとめたレビュー論文を執筆した。カイラル物質に対する電磁場応答を、フロッケ理論を活用して解析し、円偏光電磁場とカイラリティの結合様式を明らかにした。また、カイラル結晶とカイラルフォノンとの結合に関して、格子模型を用いて解析し、エネルギー分散に関して一般的に成り立つ法則を明らかにした。そのほか、強軸性秩序と呼ばれる系に対する横型応答を利用したスピン流生成の提案、電場によるキラリティの誘起、また、ある種の反強磁性体は軸性のスカラー秩序とみなせて、この状態に静的な電場と磁場を印加することによりカイラリティが誘起できることなどを提案した。さらに、秩序変数が長年未解決のURu2Si2の秩序変数として交替型のカイラル電荷秩序というシナリオを提案し、可能な確認実験を提案した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
電子状態を対称性の観点から扱うことのできる多極子完全基底の理論が完成し、具体的に計算を実行するためのソフトウェアの整備が進んだため、カイラリティに関する多くの疑問事項に対して具体的な模型計算を効率的に実行できた。 そのため、順調に研究課題が進み、順次論文出版を行っている。
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今後の研究の推進方策 |
電子状態計算と多極子基底分解の手法を用いて、系統的な実験が行われているダイシリサイド系の電子状態を電気トロイダル単極子に着目して分析し、系の異方性・スピン軌道相互作用の大きさ等のミクロパラメータとスピン流や電流磁気応答の相関などを調べることにより、カイラリティに由来する現象の定量的な理解を目指していく。
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