研究課題/領域番号 |
23K03289
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13020:半導体、光物性および原子物理関連
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研究機関 | 京都先端科学大学 |
研究代表者 |
羽部 哲朗 京都先端科学大学, ナガモリアクチュエータ研究所, 助教 (60737435)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
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キーワード | 物性理論 / 原子層物質 / 電子スピン伝導 / 遷移金属ダイカルコゲナイド / 個体物性理論 |
研究開始時の研究の概要 |
原子層物質のヘテロ構造は物質の電気的光学的性質を変化させ、新たな機能的性質をもつ原子スケールの薄さの薄膜物質を生み出す可能性をもつ。本研究では、その基礎として原子層物質の面内ヘテロ接合による結晶および電子構造の変化を理論的に研究する。また、その電子構造を基にして新奇な電子伝導現象の開拓を目指す。さらに本研究を通して、原子スケール薄膜物質をもちいたヘテロ構造による静的な物性制御への指導原理を与える。
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研究実績の概要 |
2023年度は、本研究の目的である異なる原子層物質をもちいたヘテロ構造で任意の性質を発現させるための理論構築を実現するための予備的な研究を行った。まず、原子層物質である遷移金属ダイカルコゲナイド(TMDC)のヘテロ構造における電子構造とその電子輸送特性の変化について理論的な解析を行った。特に、金属的な性質を示す五族元素を含むTMDCと半導体的な性質を示す六属元素を含むTMDCの組み合わせについて、構成元素を変えながら詳細な解析を行った。その結果として金属的TMDCであるNbS2と半導体的TMDCであるMoSe2(またはWSe2)のヘテロ構造において大きな電荷の移動が生じ、スピン伝導性能が向上することが明らかとなった。また、この組み合わせでは安定な積層構造が非従来型の積層パターンである2R構造をとることが明らかとなった。元々、TMDCは単層化によってスピン伝導性能を獲得することが知られており、その性質は積層することで喪失するものあった。しかし、本研究によって金属的と半導体的の組み合わせで非従来型の積層構造が安定化し、純物質とは逆に積層によるスピン伝導性能の向上が起きることが明らかとなった。また、遷移金属ダイカルコゲナイドではフェルミエネルギー近傍の電子状態は遷移金属元素由来の原子軌道で主に構成されており、当初の予測では遷移金属元素の変化がヘテロ構造の性質に大きな影響を与えると予想されたが、それとは異なる興味深い結果を明らかにした。ヘテロ構造においては、各物質の格子定数が異なるために接合界面で格子構造の変形が起こる。本研究によって、カルコゲン元素を原子数の大きなものにすることで格子構造の変形に対する安定性が向上することが明らかとなった。このような、性質の変化は遷移金属元素の変更では起こらないもので新たな知見である。これらの結果は査読ありの国際学術誌において論文として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現在までの研究では、任意の性質を発現する原子層ヘテロ構造のデザインに向けた基礎理論の構築の第一段階が完了した。現在までの解析で、ヘテロ構造の構築において物性を変化させる要因について知見を得ることに成功した。さらに、研究計画の立案段階では想定されていなかった自発的な原子層間の電荷移動が明らかとなるなど、追加的な研究の成果も得られた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、当初の計画通りにヘテロ構造における様々な物性を理論的に求め、また並行して他の原子層についてもヘテロ構造における電子構造の変化を理論的に明らかにしていく。その上でヘテロ構造形成に伴う物性の変化と電子構造の関係を解析し、先に明らかとしたヘテロ構造形成に伴う電子構造の変化と合わせて、ヘテロ構造の特徴と物性を直接結びつける関係を明らかとしていく予定である。
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