研究課題/領域番号 |
23K03299
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
大成 誠一郎 名古屋大学, 理学研究科, 准教授 (80402535)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
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キーワード | ツイスト2層グラフェン / 強相関電子系 / 非フェルミ液体的輸送現象 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の第1の計画は、SU(4)対称性を持つ新規強相関電子系TBGにおいて、超伝導発現機構と非フェルミ流体的輸送現象を従来の理論体系を超えて解明することである。SU(4)揺らぎを考慮した新規理論体系で統一的にTBGのネマティック秩序、超伝導、非フェルミ流体的輸送現象を解明することを目指す。 本研究の第2の計画は、近年発見された強相関電子系の未解明問題を解決することである。鉄系超伝導体の非フェルミ液体的輸送現象や、最近報告された鉄系超伝導体Fe(Se,S), Fe(Se,Te)やカゴメ系AV3Sb5 (A=Cs, Rb, K)の相図は未解明である。TBGの多彩な相図と比較し、統一的な理解を目指す。
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研究実績の概要 |
魔法角(θ~1.1°)ねじれ二層グラフェン(MATBG)において、超伝導相等の多彩な興味深い電子状態が報告されおり、ほぼフラットなバンドを有することから、新規強相関電子系として注目を集めている。更に、温度に比例する(T-linear)抵抗等の非自明な“非フェルミ液体的輸送現象”が広い電子密度領域で観測されている。非フェルミ液体的輸送現象は銅酸化物高温超伝導体においても観測されており、スピン揺らぎ理論により理解されている。MATBGにはバレー自由度が存在するため、局所クーロン相互作用がスピン・バレーの複合自由度に関して回転対称なSU(4)対称性がある。この高い対称性に起因して、多チャンネルのSU(4)揺らぎが発達するため、従来のスピン揺らぎ理論を越えて解析する必要がある。 本研究の目的はMATBGにおいてSU(4)揺らぎを考慮することで広い電子密度領域で観測された非フェルミ液体的輸送現象を説明することである。まず、自己エネルギーをSU(4)揺らぎを媒介して、揺らぎ交換(FLEX)近似に基づいて計算した。得られた自己エネルギーは従来のスピン揺らぎ理論と同様、温度に比例していた。その原因として、スピン揺らぎは弱いのにも関わらず、15チャンネルのSU(4)揺らぎが自己エネルギーに寄与するためだと考えられる。先行研究の音響フォノン散乱機構[3]で説明できなかったT-linear抵抗や、その大きな傾きが定量的に再現できた。以上より、MATBGの非フェルミ液体的挙動は電子相関由来であり、発達したSU(4)揺らぎによるものと予想される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
魔法角ツイスト2層グラフェンの非フェルミ流体的T-linear抵抗を多チャンネルSU(4)揺らぎにより説明出来ることを示した。スピン揺らぎが小さいにもかかわらず、この系で非フェルミ流体的輸送現象が現れるのは15チャンネルSU(4)揺らぎにより自由エネルギーが発達するためである。このSU(4)揺らぎは相図に現れるネマティック秩序を説明するためにも有用であるため、相図全体の統一的理解が進んだと考えられる。このように、魔法角ツイスト2層グラフェンの相図および物理の解明を目指す本研究課題は順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
強相関電子系である魔法角ツイスト2層グラフェンの非フェルミ流体的輸送現象はT-linear抵抗以外にもホール係数やゼーベック係数の温度依存性に表れる。これら輸送係数を計算することで、実験との整合性、および実験結果の予測を行う予定である。また、ネマティック秩序相の近傍で出現する超伝導の発現機構を研究し、SU(4)揺らぎやネマティック揺らぎとの関係を明らかにしたい。更に、魔法角ツイスト2層グラフェンの接合系や界面における新規物性について研究する予定である。
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