研究課題/領域番号 |
23K03303
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
梅尾 和則 広島大学, 自然科学研究支援開発センター, 准教授 (10223596)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 2,340千円 (直接経費: 1,800千円、間接経費: 540千円)
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キーワード | 一軸圧力 / 四極子揺らぎ / 超伝導 / 電気抵抗 / 比熱 |
研究開始時の研究の概要 |
近年,非従来型超伝導の研究が盛んに行われ,その超伝導対形成の機構としてスピン揺らぎに加えて軌道揺らぎの重要性が注目されている。しかし,軌道揺らぎによる超伝導についての検証は進んでいない。そこで本研究では,軌道揺らぎの効果を抽出できる系として,結晶場基底状態が四極子(軌道)の自由度のみをもつ立方晶Pr系超伝導体PrTr2X20 (Tr=Ir, Rh,X=Zn, Al)に着目する。その系の主軸方向に一軸圧力を加えた状態で,電気抵抗と比熱を同時に測定し,結晶歪みと四極子の結合を通してその揺らぎを精密に制御し,四極子揺らぎのどのモードが超伝導対の形成に強く関わっているのかを明確にする。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は,スピン自由度をもたず四極子の自由度を基底状態にもつPr系超伝導体PrTr2X20 (Tr=Ir, Rh,X=Zn, Al)の一軸圧力下での電気抵抗と比熱を測定し,その超伝導に関与している四極子(軌道)揺らぎの詳細を明らかにすることである。 本年度はPrIr2Zn20の四極子転移(T_Q=0.11 K)と超伝導転移(T_C=0.05 K)の一軸圧力下電気抵抗を測定した。一軸加圧には現有のRazorbill Instruments社製の極低温引張圧縮セルCS100を用い,そのセルを現有の断熱消磁冷凍機を用いて,0.04 Kまで冷却した。まず,試料に効率よく一軸圧力を印加できるように試料ホルダーを二つに分割し,その間に試料を橋渡しするような固定方法に変えた。また,試料を固定する接着剤の材質を変更し,試料をしっかりとホルダーに固定できるようにした。さらに試料の断面積を従来より40%減少させて,試料がより歪みやすくなるよう改良した。それらの改良を施して測定した結果,試料の[100]方向を0.015%まで圧縮させた時,T_Qは0.127 Kから0.123 Kまで低下し,同時にT_Qも0.086 Kから0.080 Kまで低下した。このT_Qの低下は[100]方向に試料を圧縮したことによってPrの局所対称性が立方対称から低下し,それによってPrの4f電子がもつ四極子自由度が抑制されたことを示唆する。このT_Qと同時にT_Cも低下したことは,四極子自由度と超伝導の相関を明確に示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度は一軸圧力下電気抵抗測定によってPrIr2Zn20における四極子転移(T_Q=0.11 K)と超伝導転移(T_C=0.05 K)の相関を観測できたので,おおむね順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度には,スピン自由度をもたず四極子の自由度を結晶場基底状態にもつPr系超伝導体PrTr2X20 (Tr=Ir, Rh,X=Zn, Al)に効率よく一軸圧力を印加でき,また,安定して電気抵抗測定が可能となるように,試料寸法を最適化し,電気抵抗測定用リード線の試料へのコンタクト法を確立する。それを用いて,立方晶PrTr2X20の各主軸方向([100], [110], [111])に一軸圧力を印加し,四極子秩序と超伝導の転移温度の変化を電気抵抗測定から調べる。また,同時に一軸圧力下極低温での比熱測定システムを新たに立ち上げる。
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