研究課題/領域番号 |
23K03304
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
光田 暁弘 九州大学, 理学研究院, 准教授 (20334708)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | ユーロピウム / 純良単結晶育成 / 価数揺動 / 重い電子系 / 圧力効果 / 価数揺らぎ / 複数f電子系 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、Euの価数揺らぎが引き起こす興味深い基底状態、物理現象に着目する。Euでは珍しい近藤効果や重い電子状態と価数揺らぎの相関を探るとともに、Eu系では未発見の量子臨界現象を探索する。更に価数秩序の融解に着目して、高圧下で価数揺らぎや磁気揺らぎを引き起こして新奇量子現象の誘起を試みたり、最近育成に成功した純良単結晶によって基底状態と価数転移の相関を調べる。実験結果を価数揺らぎの理論家と議論して本研究を更に推進する。
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研究実績の概要 |
本年度はユーロピウム化合物の単結晶育成および新しい置換系試料の作製を行い、主に常圧及び高圧下の磁化測定による物性評価を行った。 価数揺動系のEuNi2P2においてはNiサイトをPt置換した試料、PサイトをAs置換した試料の作製を試みた。一部で単結晶ライクな試料が育成できたが、多くは粉末試料で得られた。Pt置換系においてはSnフラックス法によって単結晶ライクな試料が得られ、僅かにEuの価数が2価寄りにシフトしている様子が確認された。重い電子状態も保たれており、重い電子状態が僅かに増強されていることが窺えた。As置換系においては粉末試料が得られた。As置換とともに格子定数が徐々に変化していくこと、磁化率に鋭いピークが現れ徐々に大きくなることからAs置換が系統的に行えていると考えられる。磁化率のピークは反強磁性秩序によるものであるので、Euの価数は大きく2価寄りにシフトしていることが窺える。ピークが出現する直前のAs置換試料では低温のパウリ常磁性的な磁化率が増加し、重い電子状態の増強が実現していることが窺える。また、このAs置換の試料に静水圧力を印加し、その影響を調べたところ、静水圧力によって重い電子状態の増強は抑制されていくことが示された。As置換による負の化学的圧力と静水圧力がこの系では相反する効果を示している。 反強磁性体EuRh2Si2に対しては、RhサイトをCo置換した試料において価数転移が誘起されることがわかっているが、置換量の不均一や磁性不純物の混入によって、価数転移のブロードニングや磁化率の低温発散などの問題があった。今回、ブリッジマン法によって純良単結晶試料の育成を試み、非常に小さい結晶ではあるが、鋭い価数転移と磁化率の低温発散の少ない試料を作製することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
試料作製についてはEuNi2P2の2種類の原子置換系試料の作製に成功しており、Euの価数揺動状態の制御と重い電子状態の相関について一定の知見が得られつつある。また、静水圧力下の測定をすることにより原子置換とは逆の効果も観測されていて系統的な結果も得られている。一方、価数転移を示す単結晶試料の作製においては、申請者がこれまで行っていない試料作製法を採用しているため想定外のトラブルが起こったり試行錯誤が必要な点もあり、やや遅れているところがある。この点については少しずつ克服しつつ、小さいものではあるが研究目的を満たす単結晶試料ができつつある。今後、育成条件の最適化を進めてより大きな単結晶育成を進めて行く。 また本年の新たな試みとして、価数秩序系Yb化合物や遍歴電子磁性体の単結晶試料に対して一軸圧力を印加して、特定方向の格子変化と磁性変化を調べる研究を始めており興味深い結果が得られている。この実験手法はEu系の価数揺動、価数転移を示す物質にも適用できる可能性があり、新たな研究の方向性ができつつある。
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今後の研究の推進方策 |
前年に引き続き、価数揺動、価数転移を示す試料の単結晶育成を進める。特に単結晶のサイズを大きくして様々な物性測定に適用できるものを目指し、電気抵抗、比熱などの基礎物性を測定して、重い電子状態の増強や基底状態と価数転移の相関について調べて行く。また、ある程度の物性評価ができれば、放射光施設でX線吸収を測定してEu価数の直接評価を行いたい。昨年度末に光吸収実験の共同研究の新しい申し出があり試料提供を行うとともに、これまで行ってきた光電子分光、点接触分光実験についても、本研究で得られた純良単結晶を新たに提供して、これまで以上に本質的な価数揺動の振舞を追求する研究に貢献する。 さらに、価数秩序を示すEu化合物の研究も進めていく。EuNiPについて圧力2.5GPa以上の振舞を基礎物性測定から明らかにするとともに、2.5GPa以下で見つかっている多くの相転移の原因を調べるためにX線吸収やX線回折からEu価数や構造の変化を調べていく。
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