研究課題/領域番号 |
23K03309
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 金沢工業大学 |
研究代表者 |
田中 康寛 金沢工業大学, 基礎教育部, 講師 (50541801)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,420千円 (直接経費: 3,400千円、間接経費: 1,020千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
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キーワード | 光誘起相転移 / 過渡スペクトル / トポロジカル絶縁体 |
研究開始時の研究の概要 |
物質(固体)に光を照射すると、その物理的性質が大きく変化する光誘起相転移と呼ばれる現象が起こる。なかでも、光照射によって系にトポロジカルな変化が現れる現象は光誘起トポロジカル相転移と呼ばれ、グラフェンに代表されるディラック電子系物質を対象として近年、精力的に研究が進められている。本研究では、強い電子間相互作用による磁気的秩序あるいは電荷秩序を持つディラック電子系を考え、光照射をした場合に、どのような現象が現れるかを理論的に調べる。特に、光によるトポロジカルな相変化と、電子間相互作用に由来する秩序ダイナミクスの共存、競合により、新しいタイプの光誘起相転移が現れるかを明らかにする。
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研究実績の概要 |
本年度はまず、1次元電子系において光パルス照射による電荷秩序融解の際の過渡スペクトルの数値計算を行った。具体的には、クーロン相互作用のあるスピンレスフェルミオン模型を用いて、基底状態の電荷秩序が光で融解する様子を時間依存シュレディンガー方程式により調べた。このモデルの電荷秩序状態では、1電子ギャップΔの約半分のエネルギーをもつ集団励起モードが存在し、このモードに対応する周波数(ω~Δ/2)の光で励起すると、系は大きな応答を示すことが分かっている。1電子ギャップを越える周波数(ω>Δ)で光励起を行うと、価電子帯から伝導帯へと電子が移動し、系はキャリアドープされた形となって秩序が弱められる。この波数空間における電子移動は、過渡スペクトルを計算することによって実際に見ることができる。一方で、光の周波数が1電子ギャップより小さい場合、秩序融解に伴って過渡スペクトルがどのような変化を示すかは明らかになっていなかった。 今回我々は、平均場近似の範囲で、集団励起に対応するω~Δ/2の周波数を持つ光パルスを照射した際の過渡スペクトルを計算し、電荷秩序融解の際に1電子ギャップ内に状態があらわれ、それが光強度とともに成長して基底状態のギャップ構造が消失することを見出した。これは、ω>Δの場合と定性的に異なる振る舞いであり、実験でも観測可能であると考えられる。さらに、厳密対角化を用いて量子揺らぎを考慮した計算も行い、同様の結果が得られることを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今回の計算では、電子間の相互作用に起因する秩序が光で融解する際、照射する光の周波数によって過渡スペクトルに顕著な特徴が現れることが分かった。その背後にあるのは、電子的秩序による集団励起モードが光応答を増大させることである。ここで得られた知見は、円偏光照射などを行って系にトポロジカルな相変化が生じる際にも重要になると予想される。また、光応答への集団励起モードの影響は高次高調波などでも近年精力的に調べられているが、光パルス照射後の過渡スペクトルへの効果はほとんど議論されておらず、トポロジカル相転移に限らず一般的な立場からの研究成果となりうることが分かった。今後、実験での観測可能性なども含めて議論していくことが重要であると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
まず、今年度得られた数値計算結果を、より物理的に解釈のしやすい摂動計算から理解することを目指す。これは、高次高調波に対して行われた先行研究を応用することで可能になると考えている。具体的には、光電場を摂動パラメータとして過渡スペクトルを計算し、集団励起モードに対応する周波数の光で励起した場合に、1電子ギャップ内に状態が現れる機構を明らかにする。その結果から、平均場近似や厳密対角化で得られた結果の解釈を行う。さらに、今回使ったモデルでは、集団励起モードのエネルギーが1電子ギャップの半分となっていたが、2次元系や一般のモデルではそれらの比率は異なると予想される。そのような系で電荷秩序の光誘起融解が起こる場合に、過渡スペクトルにどのような特徴が現れるかを明らかにする。
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