研究課題/領域番号 |
23K03312
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 一般財団法人総合科学研究機構 |
研究代表者 |
飯田 一樹 一般財団法人総合科学研究機構, 中性子科学センター, 副主任研究員 (00721987)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 2,990千円 (直接経費: 2,300千円、間接経費: 690千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | スピングラス |
研究開始時の研究の概要 |
本課題では (1) 非弾性中性子散乱実験・(2) DymPDF解析・(3) ソフトウェア開発が主要な要素である。(1) 非弾性中性子散乱実験にはJ-PARCの中性子散乱実験装置4SEASONSを用いる。試料は研究協力者の北海道大学の吉田紘行教授より提供を受けている。(2) DymPDF解析に関して、CROSSの社本真一博士 (「動的磁気対相関関数解析法の開発による磁気クラスターダイナミクスの解明」の研究代表者) と緊密に議論できる状況にある。(3) 社本博士が代表の科研費研究においてDymPDF解析のプログラム開発中である。開発するプログラムは、一般ユーザー向けに公開する予定である。
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研究実績の概要 |
スピングラスの乱れのない極限としてスピンジャムという状態が理論的に提案されている。スピンジャムはスピングラスと異なりエネルギーが突出して低い安定状態が存在せず、似たような大きさのエネルギー極小値が数多く存在している磁気状態である。スピンジャムは幾何学的フラストレーションを伴うある種の結晶構造に量子揺らぎを導入すると、乱れがなくてもトポロジカル的にガラス的な性質を持ちうる点にある。スピンジャムのよいモデル物質であるSrCr9pGa12-9pO19 [SCGO(p)]は、Crの組成pを変化させることで、p>0.8の組成ではスピンジャムを、p<0.8の組成ではスピングラスをそれぞれ示す事が知られている。我々が新たに開発中の手法である動的磁気対相関関数法を非弾性中性子散乱実験に適用すれば、モデル物質SCGO(p)を実空間と逆格子空間の両面から調べることが出来、その特異なエネルギー構造を解明することが期待される。そこで、スピンジャムを理解するために令和5年6月に、SCGO(p)のp = 0.97と0.62の2つの組成に関して非弾性中性子散乱実験実験をJ-PARCで行った。その結果、スピンジャムとスピングラスに属する2つの組成は定量的にも定性的にも異なる結果が得られた。ガラス系で古くから知られていたボゾンピークが、近年スピングラス系でも磁気ボゾンピークが新たに発見されている。SCGO(p)でもそのような磁気ボゾンピークが観測されており、スピンジャムとスピングラスではエネルギースケールも局所構造も異なる性質を示している。今後、SCGO(p)で新たに観測されたこの磁気ボゾンピークを理解するために、さらなる実験・解析を行う予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和5年6月に、SCGOのp = 0.97と0.62の2つの組成に関して非弾性中性子散乱実験実験をJ-PARCで行った。SCGOの磁性の組成依存性をさらに調べるためのビームタイムを確保しており、令和6年度に追加の非弾性中性子散乱実験実験をJ-PARCで行う予定である。
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今後の研究の推進方策 |
我々が新たに開発中の手法である動的磁気対相関関数法を適用することでスピンジャムモデル物質SrCr9pGa12-9pO19を実空間と逆格子空間の両面から調べ、その特異なエネルギー構造を解明を目指している。現在、実験結果を動的磁気対相関関数法で解析する方法は確立されつつある。一方、モデル計算を行うプログラムはまだ整備されておらず、令和6年度に取り組む予定である。
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