研究課題/領域番号 |
23K03313
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
|
研究機関 | 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構 |
研究代表者 |
明石 遼介 国立研究開発法人量子科学技術研究開発機構, 高崎量子応用研究所 量子機能創製研究センター, 主幹研究員 (40734356)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2026年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
|
キーワード | 物性理論 / 超伝導 / 第一原理計算 |
研究開始時の研究の概要 |
Migdal-Eliashberg(ME) 理論はフォノン機構超伝導を記述する標準理論として研究に広く用いられている.しかしそこで歴史的に用いられてきた,一見些末に見える電子状態の詳細に関する近似的取扱いが,近年発見された水素化物超伝導体などでは破綻を来たす.標準手法を現代的な超伝導体に適合させ,信頼性の問題を解決するため,ME 理論を近似なしに実行する第一原理計算手法を定式化および実装する.手法を水素化物などに適用し,そのデータから“認知されていなかったが実は影響が甚大な電子状態の詳細構造”による転移温度などの観測量への影響機構を理論として確立し,実験検証への道具立てを与える.
|
研究実績の概要 |
本課題では,フォノン超伝導物質の中でも,従来の近似理論が破綻を来たすような電子状態を持つ系に着目し,そのような系を包含するような理論拡張と,それを応用することによる超伝導物性解明を行う.
本年度は,近似理論が破綻を来たす系の具体例として硫化水素の高圧相H3Sの電子状態における特異性の検討を行った.この物質においては電子の状態密度がフェルミレベル近傍にピーク構造を持つことが知られているが,これをもたらす微視的機構は未解明であった.今回我々はこのピークがほとんど一様な電子ガス一般における,平面波回折状態の3重干渉に起因することを発見,理論としてまとめた.
本結果により,H3Sの特異な電子状態の精確な特徴付けおよび特異性を再現する最小モデルの抽出が達成された.これらの結果は,特異性を考慮した第一原理超伝導計算を効率的に実行する際に有用である.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は大枠として以下項目の達成を目指す: (1)ME 理論に忠実な第一原理転移温度計算手法の実装 (2)水素化物超伝導体における自己エネルギーシフト項および多バンド効果の定量的研究 (3) フォノンと電子のエネルギースケールが近接するときの自己エネルギー効果の理論.
本年度の結果は項目(2)の達成のための重要なステップであり,項目(1)の計算効率向上に役立てることができる.実際に,結果を踏まえた第一原理超伝導計算が進行中である.全体として研究計画を順調に遂行している.
さらに,結果をまとめた理論は本来の目標にとどまらない広い応用可能性を持つことがわかったため,基礎理論の発展にも資することができている.
|
今後の研究の推進方策 |
H3Sの特異電子状態について,特異性を適切に考慮した第一原理転移温度計算の完遂を目指す.その際に計算の基礎理論を見直し,特異性を取り入れることができるように近似を改良する.最小モデルを活かして,高精細かつ低コストの計算アルゴリズムを確立,実装する.
その後,H3Sにおける自己エネルギーシフト項および多バンド効果を第一原理計算から抽出し,その振る舞いについて調べる.結果を取り入れて水素化物全体に応用可能な理論を打ち立てることを目指す.
水素化物超伝導分野の進歩の速さを考慮し,新たな発見報告などがあれば取り扱う物質については適宜追加・変更も行い対応する.
|