研究課題/領域番号 |
23K03316
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石河 孝洋 東京大学, 大学院理学系研究科(理学部), 特任助教 (40423082)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
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キーワード | 第一原理計算 / 進化的アルゴリズム / ニューラルネットワークポテンシャル / ランタン水素化物 / 安定相 / 超伝導相 / 高温超伝導 / 構造探索 |
研究開始時の研究の概要 |
2022年に、150万気圧下におけるランタン水素化物(La-H)で550ケルビンの室温超伝導が観測された。La-Hに第3元素(x)や第4元素(y)が化合して、この室温超伝導が引き起こされた可能性が考えられているが、高圧力下における安定組成・安定構造が不明であるため、第一原理計算では再現できていない。そこで本研究では、これまでに開発した、進化的アルゴリズムに立脚した独自の物質探索手法を適用して、高温超伝導が期待できるx及びyの選出、及び各圧力下での安定組成・安定構造を決定し、得られた相図に従って超伝導転移温度を計算することによって実験結果の検証と新規高温超伝導相の探索を行う。
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研究実績の概要 |
150万気圧下におけるランタン水素化物(La-H)が550ケルビンで超伝導になると報告されたが、その詳細は不明であり、他の研究グループによる実験や第一原理計算でも未だ再現できていない。La-Hに第3元素(X)や第4元素(Y)が化合して、「超室温」超伝導が引き起こされた可能性が考えられている。本研究課題では、La-X-H系及びLa-X-Y-H系における安定組成・安定構造、超伝導性を進化的アルゴリズムと第一原理計算によって探索することにより、超室温超伝導の再現と低圧領域でも安定化する新規高温超伝導相の発見を目指す。 安定相を予測するためには、組成・構造を網羅的に変化させて形成エネルギー凸包を構築し、凸包上やその近傍に出現する化合物を見つけ出す必要がある。これまでの研究で、進化的アルゴリズムで候補組成・候補構造を生成し、密度汎関数法に基づく第一原理計算で構造最適化を実行して凸包を効率良く構築する手法を開発した。2023年度は、これに高汎用性ニューラルネットワークポテンシャルを用いた原子シミュレータのMatlantisを連動させることによって安定相の高速探索を可能にした。Xの有力候補のひとつと考えられている窒素(N)がLa-Hと化合した場合を想定し、検証実験が容易に行える20万気圧下でこの手法を適用させたところ、La2NHやLa2NH2など複数の安定相・準安定相が得られた。これらの化合物について、Allen-Dynesの式を使って超伝導転移温度の計算を行った結果、La2NH2が最高値を示し、14.4 Kとなった。実験で報告されているような高温超伝導の発見にはまだ至っておらず、更なる検証が必要だが、低圧力領域における新超伝導物質を予測することに成功した。これらの成果をまとめてPhys. Rev. Bで発表を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
これまでの研究で開発した進化的アルゴリズムと密度汎関数法を用いた第一原理計算による構造探索手法に、高汎用性ニューラルネットワークポテンシャルを用いた原子シミュレータのMatlantisを連動させることによって、当初の計画よりも高速に安定相と超伝導相の探索を行うことができ、その成果を論文化することができたため。
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今後の研究の推進方策 |
20万気圧下におけるLa-N-H系では実験で報告されているような高温超伝導は得られなかったため、今後はNを別の候補元素の白金(Pt)などに変更し、圧力を20万気圧から180万気圧まで変化させることにより、高温超伝導の可能性を検証する。
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