研究課題/領域番号 |
23K03324
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
|
研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
安齋 太陽 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (90609736)
|
研究分担者 |
播木 敦 大阪公立大学, 大学院工学研究科, 准教授 (90875783)
|
研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
|
キーワード | 遷移金属酸化物 / 強相関電子 / 光電子分光 / 近藤効果 / Zhang-Rice 状態 / 電子状態 |
研究開始時の研究の概要 |
四重ペロブスカイト型の遷移金属酸化物では、金属イオンの 3d 軌道と酸素イオンの 2p 軌道の混成だけでなく、異種の金属イオン間の電荷・軌道・スピンの自由度が強く相関して電荷の不均化や重い電子状態などの単純ペロブスカイト構造では禁止されていた物性が発現する。我々は重い電子の源となる近藤効果と高温超伝導の担い手となる Zhang-Rice 状態の競合 (Kondo-Zhang-Rice 相図) という新概念を用いて、複カチオン性に由来する複雑な多電子構造を定量的・統一的に記述する。世界最高水準の分光・回折実験と最新の理論計算の検証を経て、四重ペロブスカイト酸化物の学理を構築することに挑戦する。
|
研究実績の概要 |
四重ペロブスカイト型の遷移金属酸化物では、金属イオンの 3d 軌道と酸素イオンの 2p 軌道の混成だけでなく、異種の金属イオンの電荷・軌道・スピンの自由度が強く相関する。本課題の目的は、複カチオン性に由来する複雑な多電子構造を重い電子の源となる近藤効果と高温超伝導の担い手となる Zhang-Rice 状態の競合 (Kondo-Zhang-Rice 相図) で定量的・統一的に記述することである。本年度は、硬 X 線を用いた吸収分光測定に加えて、低エネルギー放射光を用いた光電子分光実験を SrCu3Ru4O12 に対して行った。SrCu3Ru4O12 は d 電子系であるにもかかわらず重い電子状態を示す珍しい物質である。Cu K 端の吸収エネルギーとスペクトル形状は電子配置の参照試料となる CuO と酷似していた。このことから SrCu3Ru4O12 の Cu は 3d9 の状態にあり、局在的な磁気モーメントを有すると考えられる。光電子分光スペクトルのフェルミ準位の近傍に明瞭なピークを観測することに成功した。このピークの温度変化は電子相関を組み入れて四重ペロブスカイト酸化物に最適化した理論計算で再現された。以上のことから、本研究で観測した光電子ピークは、局在的な Cu 3d9 電子と遍歴的な Ru 4d 電子の軌道混成により作られた近藤共鳴ピークであると推察される。新規に合成した CeCu3Ru4O12 についても研究を始めており、磁化率の温度依存性や光電子スペクトルの実験データの取得を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた電子状態の A サイト依存性の実験や分光スペクトルを再現する計算コードの開発を予定通りに行い、重い電子状態を理解するうえで欠かすことのできない近藤共鳴ピークに関する知見が得られた。研究は順調に進展しているといえる。
|
今後の研究の推進方策 |
本年度の研究から、A サイトに Sr を配置した四重ペロブスカイト酸化物の電子状態を明らかにすることができた。次年度は、A サイトを Ce に置換した CeCu3Ru4O12 の研究を本格化させる。磁化率などの物性量を定量的に精度良く評価し、高分解能な光電子分光実験にて近藤共鳴ピークを直接的に観測する。A サイト置換した物質の電子状態の情報から、f 電子系に匹敵する重い電子状態の発現機構の解明を目指す。
|