• 研究課題をさがす
  • 研究者をさがす
  • KAKENの使い方
  1. 前のページに戻る

3価コバルト酸化物における多サイト・多電子的励起状態の提案と検証

研究課題

研究課題/領域番号 23K03326
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
研究機関東京理科大学

研究代表者

齋藤 智彦  東京理科大学, 先進工学部物理工学科, 教授 (30311129)

研究分担者 小林 義彦  東京医科大学, 医学部, 講師 (60293122)
研究期間 (年度) 2023-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2025年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
キーワードコバルト酸化物 / 角度分解光電子分光 / 電子構造 / スピンクロスオーバー / コンプトン散乱 / 低スピン / 高スピン / 光電子分光 / バンド構造
研究開始時の研究の概要

ペロブスカイト型Co酸化物LaCoO3で観測される100 K付近での磁化率の急上昇は、単純な低スピン高スピン転移では説明できず、50年以上未解明である。この起源を電子構造の観点から明らかにし、Co酸化物全体のスピン状態の電子構造的起源についての学理を構築することを目標とする。そのために、LaCoO3と姉妹物質RCoO3(R=希土類)さらには高スピン物質Sr2CoMO6(M=Sb, Nb, Ta)の、硬X線光電子分光や軟X線角度分解光電子分光測定を実施し、その結果を、本グループで開発中の、第一原理バンド計算に基づく光電子分光スペクトル解析プログラムで解析し、電子構造の知見を得る。

研究実績の概要

(1) 軟X線角度分解光電子分光(SX-ARPES)によるペロブスカイト型Co酸化物LaCoO3の電子構造研究:我々はここ数年来LaCoO3のARPES測定に挑戦してきており、これまでに、ある程度のバンド分散は観測できたが、結晶方位が同定できず、ARPES測定としては失敗であった。しかし今回、結晶方位を正確に定めた試料で、室温における擬似立方晶<100>面の劈開面について、世界に先駆けてLaCoO3のARPESスペクトルを測定することに成功した。ただしこの実験では、低温スペクトルの測定はチャージアップのために成功しなかった。そこで、2回目の実験では、チャージアップを防ぐために降温を110 Kまでに制限し、室温300 Kと110 Kのスペクトルの比較を試みた。110 Kにおいても完全にチャージアップを防ぐことはできなかったが、チャージアップの効果を0.1 eV程度の僅かなエネルギーシフトのみに抑えることに成功し、世界に先駆けてLaCoO3の低温ARPESスペクトルの測定に成功した。

(2) コンプトン散乱を用いた電子運動量密度測定:PrCoO3における、300Kから800Kでの擬立方晶[100]方向におけるコンプトンプロファイル(Jz(pz))の温度依存性の測定データについて解析と考察を行った。Jz(pz)に大きな変化が観測されたが、運動量空間に大きく広がっていることから、実空間で局在性の強い4f軌道の変化を捉えていると考えられる。一方、500K付近に期待されるCo 3d軌道のスピンクロスオーバーによる変化は観測されなかったため、引き続き解析と考察が必要である。

(3) 第一原理バンド計算に光イオン化断面積と偏光配置を考慮した光電子スペクトル解析プログラムを研究計画通り、実用化した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

LaCoO3の100 Kのスピンクロスオーバーに伴う電子構造変化を説明するモデルの一つに、磁気励起子絶縁体モデルがあるが、励起子絶縁体では温度変化と共にフェルミ準位近傍のバンド構造が特徴的に変化することが知られている。そこでこのモデルの検証、さらには詳細な電子構造の理解のためにはバンド構造を直接測定できるARPES測定が不可欠であるが、これまでARPES測定の成功例は報告されていなかった。
本課題ではこの測定に挑戦し、室温、および最低温とはいかなかったがある程度低温の110 KでのARPES測定に成功した。これは研究計画通りである。また、光電子分光が苦手な室温以上の500 Kのスピンクロスオーバーについては、LaCoO3と比較すべきPrCoO3のコンプトン散乱データについての解析を進めている。
さらに、第一原理バンド計算に光イオン化断面積と偏光配置を考慮した光電子スペクトル解析プログラムを研究計画通り実用化した。

以上の結果から、おおむね順調に進展していると言える。

今後の研究の推進方策

今後、光電子分光測定については、LaCoO3の更なる低温ARPES測定のために試料準備の工夫を実施する。また、研究計画に沿って、高スピンCo酸化物については偏光配置依存の硬X線光電子分光(HX-PES)測定を実施する。さらに、第一原理バンド計算に光イオン化断面積(と偏光配置)を考慮した光電子スペクトルシミュレーションを用いて、SX-ARPESおよびHX-PESのデータを第一原理計算と詳細に比較する。

報告書

(1件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 研究成果

    (4件)

すべて 2024 2023

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (3件) (うち招待講演 1件)

  • [雑誌論文] Realistic Simulation of Valence-Band Photoemission Spectra by Using First-Principles Calculations on the Basis of FLAPW Method2024

    • 著者名/発表者名
      Noriaki Hamada, Satoshi Nakamura, Kenta Takahashi, Mario Okawa, and Tomohiko Saitoh
    • 雑誌名

      Journal of the Physical Society of Japan

      巻: 93 号: 5

    • DOI

      10.7566/jpsj.93.054709

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり
  • [学会発表] InGaZnO4の角度分解光電子分光2023

    • 著者名/発表者名
      山岡大起、高橋裕之介、澤田晏伯、芝田悟朗、大川万里生、河村優介、漆間由都、井上禎人、加瀬直樹、宮川宣明、堀場弘司、北村未歩、浜田典昭、齋藤智彦
    • 学会等名
      日本物理学会第78回年次大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] CE型反強磁性層状マンガン酸化物LaSr2Mn2O7の角度分解光電子分光2023

    • 著者名/発表者名
      澤田晏伯、平井雄大、宮林麟太郎、芝田悟朗、桑原英樹、北村未歩、堀場弘司、浜田典昭、齋藤智彦
    • 学会等名
      日本物理学会第78回年次大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] スピンクロスオーバーCo酸化物におけるCo-3d軌道変化のX線コンプトン散乱による観測2023

    • 著者名/発表者名
      小林義彦
    • 学会等名
      日本物理学会第78回年次大会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演

URL: 

公開日: 2023-04-13   更新日: 2024-12-25  

サービス概要 検索マニュアル よくある質問 お知らせ 利用規程 科研費による研究の帰属

Powered by NII kakenhi