研究課題/領域番号 |
23K03327
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 豊田工業大学 |
研究代表者 |
久我 健太郎 豊田工業大学, 工学(系)研究科(研究院), ポストドクトラル研究員 (50727401)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | 価数揺動 / ワイル半金属 / 熱電物質 / フェルミ液体 / 光電子分光 |
研究開始時の研究の概要 |
強相関電子物性とトポロジカル物性の融合により、物質の機能性の向上、および新奇物性の創発例が数多く報告されている。研究代表者が世界に先駆けて開発した高純度単結晶Yb3Si5は、価数揺動ワイル半金属の候補物質であり、通常の価数揺動物質と比べて熱電性能が飛躍的に向上している。本研究では、様々な実験的観点からYb3Si5が価数揺動ワイル半金属であるかを検証し、価数揺動ワイル半金属特有の新奇物性を開拓する。この研究により、金属熱電物質開発の指針を得ると共に、強相関トポロジカル物性の創発性についての知見を得る。
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研究実績の概要 |
本研究では、価数揺動ワイル半金属の候補物質であるYb3Si5純良単結晶に現れる新規物性を開拓し、その起源を明らかにすることを目的としている。低温にて、極めて低い残留抵抗率と比較的に高いゼーベック係数を示すことから、Yb3Si5は非常に良い低温熱電物質であり、本研究により低温熱電物質開発の指針が得られることも期待される。初年度では、新規物性を開拓するために、電気抵抗、磁化、比熱、熱伝導度測定を低温まで行い、特に電気抵抗測定については希釈冷凍機温度領域まで行った。また、電子状態の情報を得るため、ホール抵抗測定や角度分解放射光光電子分光測定も行った。各基礎物性は価数揺動物質が一般的に低温で示すフェルミ液体の振る舞いを示し、一見するとYb3Si5は典型的な価数揺動物質であった。しかし、各物理量の大きさに注目すると、門脇・ウッズ則やウィルソン比のように、強相関電子系物質が通常従う普遍的な関係を全く示さないことを見出した。これは、近藤効果に加え、何らかの作用が働いていることを示唆する。また、GaドープしたYb3Si5多結晶体にて超電導発現が報告されているため、Yb3Si5純良単結晶においても発現を期待していたが、0.1 Kまで超電導を示さないことが分かった。ホール抵抗は、マルチキャリア系に現れる非線形な磁場依存性を示し、その解析から電子とホールが伝導に寄与する半金属であることを見出した。SPring-8やUVSORにて行った軟X線、真空紫外光電子分光測定では、単結晶のへき開性が悪いためか、明確なバンド分散を観測することができなかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Yb3Si5は特異な熱電特性を示すだけでなく、低温にて各基礎物性が通常従う普遍的な関係に全く従わない新奇なフェルミ液体を示すことを見出した。さらに、ホール抵抗測定から電子とホールが伝導に寄与する半金属であることが分かり、この半金属状態がYb3Si5における異常物性のキーワードになっているのではないかと考えられる。一方で、Yb3Si5単結晶のへき開性が良くないため、スポットサイズが0.1 mm以下の放射光を用いても、角度分解光電子分光測定によるバンド分散観測は叶わなかった。そのため、他の手法を用いて価数揺動ワイル半金属の検証を行う必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
価数揺動ワイル半金属状態の直接観測が期待される角度分解光電子分光測定は困難なため、希釈冷凍機温度における量子振動測定や、放射光施設を利用したX線吸収分光測定により電子状態の情報を得る。また、Yb3Si5の類似物質も多結晶体にて報告されているため、Yb3Si5との各物性の類似性を調べる。Yb3Si5における特異な熱電特性は、過去の多結晶体での報告には現れていないため、Yb3Si5における異常物性は純良単結晶特有のものであると考えられる。そのため、Yb3Si5と比較するうえで、類似物質についても純良単結晶を作成する必要がある。
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