研究課題/領域番号 |
23K03333
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13030:磁性、超伝導および強相関系関連
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研究機関 | 国立研究開発法人理化学研究所 |
研究代表者 |
妹尾 仁嗣 国立研究開発法人理化学研究所, 開拓研究本部, 専任研究員 (30415054)
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研究分担者 |
中 惇 東京電機大学, 理工学部, 准教授 (60708527)
角田 峻太郎 東京大学, 大学院総合文化研究科, 助教 (60881638)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,810千円 (直接経費: 3,700千円、間接経費: 1,110千円)
2026年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 有機導体 / 磁性 / 強相関電子系 / 超伝導 / 磁気秩序 / 電磁結合 / スピン輸送 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、有機導体中の強相関電子系が示す新規な電磁結合現象を理論的に探求する。κ型と呼ばれる物質群における分子配列と反強磁性秩序の協奏による特異なスピン輸送現象についての最近の理論提案と、近年の有機超伝導体における実験の進展を背景に、A)κ型分子配列下での反強磁性スピン分裂による磁場を必要としない空間変調型の超伝導、B)空間反転対称性の破れたκ型超伝導体でのパリティ破れ、C)他の分子配列下での反強磁性秩序による電気磁気結合現象、についてそれぞれハバード型モデルを構築し解析的・数値的手法を用いて調べる。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、有機導体における磁性と電気伝導性の交差相関による電磁結合現象を、特にこれまで考慮されてこなかった超伝導を含めた特異な状態の発掘や、分子性物質に特徴的なκ型以外の多様な配列構造による対象物質へと拡大することである。本年度は、前者についてはκ型配列下での反強磁性状態において、通常は強磁場中でのみ安定化する特徴的な超伝導状態が無磁場で生じる可能性を理論的に提案し、論文を出版した。その特徴とは、異なるスピン状態を持つ電子が形成するフェルミ面の縮退が解けた時に、重心運動量が有限となる「FFLO超伝導」と呼ばれるエキゾチックな状態が安定化することを、ミクロな有効モデルから出発して理論的に示したことにある。従来、強磁場中でのみ現れるため実験的観測手段が限られていたが、本系では無磁場でも安定化する可能性があるため、その観測手段の幅が広がることによるブレイクスルーが期待でき意義深い。また、第一原理計算による有機導体の定量的なモデル化についても研究を遂行し論文を出版した。ここでのターゲットは古典的な擬1次元有機導体系であり、そこで蓄積されてきた実験・理論解析と照らし合わせて、最近開発されたスキームである第一原理手法を用いて直接的に有効モデルを構築し、その数値解析を通じて実験で観測される物性と定量的に比較することができるようになったことは意義深く、物質開発へのフィードバックを与えることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の目的である、有機導体における磁性と電気伝導性の交差相関による電磁結合現象にの探求において、一つ注目しているポイントとしてこれまで考慮されてこなかった超伝導を含めた特異な状態の発掘がある。κ型有機導体における反強磁性状態とFFLO超伝導の共存の安定性を示したことは重要な成果である。また、第一原理手法による定量的モデル化は、多様な分子配列を持つ有機導体に適用可能性を示したことになり、スピン輸送現象の解析に有効であることを示した。これらによって、成果は順調であると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究のテーマとして、界面も含めた反転対称性が破れた際の有機導体の振る舞いの探求があるが、まず今年度の新規なFFLO超伝導の提案を受け、局所反転対称性の破れによるスピン軌道結合や、界面におけるグローバルな反転対称性の破れによる効果をモデルに取り込み、パリティ混成などのエキゾチックな超伝導状態の可能性を探りたい。また一方で、有機導体の特徴である多様な分子配列において発現する、交替磁性を含む反強磁性状態におけるスピン輸送現象の解析を手掛け、圧力や光応答など多面的な電気磁気結合現象の提案を目指す。これらの研究において、第一原理計算による定量的なモデル化が有効となるため、実際の物質での具体的な観測手段・観測条件を洗い出すことができる。特に数値的に最局在ワニエ軌道を導出することによりこれまでミクロな裏付けがなく導入されてきた有機導体系のスピン軌道結合の定式化も含めて、新しい学理構築へ向けて研究を進めていきたい。
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