研究課題/領域番号 |
23K03344
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13040:生物物理、化学物理およびソフトマターの物理関連
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研究機関 | 大阪公立大学 |
研究代表者 |
森次 圭 大阪公立大学, 大学院理学研究科, 教授 (80599506)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,550千円 (直接経費: 3,500千円、間接経費: 1,050千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | アクチン / フィラメント形成 / 分子動力学シミュレーション / MSES法 / 重み付きアンサンブル法 / 分子シミュレーション |
研究開始時の研究の概要 |
アクチンの筋収縮や細胞運動といった機能は、原子レベルでのダイナミックなフィラメント形成が担っている。本研究では、構造探索法(MSES法)や重み付きアンサンブル法といった計算手法を駆使し、アクチンの構造変化とフィラメントへの結合/解離過程が共役した過程をシミュレートする。ATP結合アクチンがフィラメントに重合するパス(G型からF型への構造変化→フラグミン結合)とADP結合アクチンがフィラメントから脱離するパス(フラグミン解離→F型からG型への構造変化)に沿った自由エネルギー地形を比較し、ヌクレオチドに依存したフィラメント形成の不可逆性とその構造起因を明らかにする。
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研究実績の概要 |
本研究では、筋収縮といったアクチン細胞機能の分子基盤にあるアクチンフィラメント形成を高度な分子シミュレーション手法により原子解像度で再現し、ヌクレオチドに依存したフィラメント形成の不可逆性とその構造起因を明らかにする。今年度の研究では、研究代表者が開発した手法である構造探索法(MSES法)をアクチン単体、および、フィラメント状態を模したフラグミン複合体に対して適用した。シミュレーションの初期モデルとしては、名古屋大学前田教授らにより解かれたフラグミン結合フィラメント型アクチンの結晶構造(PDB: 7W4Z (ATP)と7W51(ADP))を用いた。MSESシミュレーションでは、タンパク質の配置が比較的自由に運動するような粗視化モデル力場を構築する必要があるが、本研究では、フィラメント構造のF型と単体のG型構造を最安定とし遷移的に周辺をも十分に動けるように粗視化力場パラメタを決定した。その粗視化モデルと全原子モデルをカップルさせ、8個のレプリカを用い500 nsのハミルトニアンレプリカ交換MSESシミュレーションを行うことにより、十分な構造探索を実現した。得られた構造アンサンブルを解析した結果、アクチン単体がフィラメントに結合する重合過程ではF型構造(フィラメント内で見られるドメインが閉じた構造)になりやすいATP結合型アクチンが支配的であるのに対し、フィラメント状態からの脱離過程ではヌクレオチドが加水分解されドメイン構造が緩んだADP結合型アクチンが優位であることが示され、それらのヌクレオチド依存性が不可逆的なフィラメント形成を実現していることを明示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度に計画した、アクチンおよびフラグミン結合アクチンでのMSES法による構造探索計算を実施し、構造ダイナミクスの違いやその構造起因としての原子コンタクトの解析を終えた。これまでの結果はフラグミン結合アクチンというフィラメント構造を「模した」モデルを用いているが、次年度では実際のアクチンフィラメントの構造ダイナミクスを分子動力学シミュレーションで直接計算することを計画しており、その予備的な計算も終えている。
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今後の研究の推進方策 |
・最近のクライオ電子顕微鏡での構造解析により解かれたアクチン5量体をモデルとし、結合するヌクレオチドを変えつつ分子動力学シミュレーションを実行する。 ・構造解析の先行研究、また、Vothらのアクチン13量体での分子シミュレーション研究と対比しつつ、アクチン分子の相互作用が両端において結合・解離をどのように制御しているかという観点から、詳細な解析を行う。 ・解析結果に応じ、より広範な構造探索が必要な場合には、アクチン5量体モデルに対してMSES法による構造探索計算を追加する。
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