研究課題/領域番号 |
23K03347
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分13040:生物物理、化学物理およびソフトマターの物理関連
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
末松 信彦 明治大学, 総合数理学部, 専任教授 (80542274)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,680千円 (直接経費: 3,600千円、間接経費: 1,080千円)
2025年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 自己駆動粒子 / 界面化学 / 非線形科学 |
研究開始時の研究の概要 |
階層性の高い系に現れる自己組織化現象の仕組みを理解することは、生命現象のメカニズム解明につながる重要な課題である。すでに数理的には、内部自由度を持つ運動素子の集団には多様で複雑な時空間構造が現れることが示されている。これは内部自由度を持たない系と大きく異なる。そのような違いが現れる普遍的な仕組みを解明するために、物理化学的な実験系を用いて再現することは重要である。そこで本研究課題では、自発的に運動する油中水滴の内部に化学振動反応を導入することで高い階層性を持つモデル実験系を構築し、液滴間の化学的や力学的な相互作用を計測し、その集団に現れる時空間構造およびその形成機構を明らかにする。
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研究実績の概要 |
自己駆動液滴の2体間相互作用を明らかにするために、まずは単純な酸化定常状態および還元定常状態の2種類の液滴に着目して実験を行った。液滴運動の相互作用としては、液滴内部の化学状態にかかわらず、引力的な相互作用が働くことが分かった。これは界面化学反応により生成される活性剤の方が生成物よりも界面張力を低下させる能力が高いことに起因しているものと考えられる。つまり、2つの液滴の間には生成物が溜まるため、互いに相手の液滴がいる側の油水界面の張力が低下する。これによって液滴の運動方向が制御され、引力的に働くものと考えられる。一方で、2つの液滴は近づくと互いに押し合い、公転のような運動を始めることが明らかになった。さらに、ペアになった液滴は一定時間が経過すると離れていくことも分かった。このペアが持続される時間が、液滴内部の化学状態に依存して異なる傾向を持つことを実験的に明らかにすることに成功した。具体的には、酸化定常状態のペアが一番短く、還元定常状態のペア、続いて酸化定常状態と還元定常状態のペアと持続時間が長くなった。この仕組みは正確には明らかにできていないが、同種のペアにおいては界面活性剤の反応速度が起因しているものと考えられる。つまり、反応が速い酸化定常状態のペアでは比較的早く液滴周囲の生成物が消費され、引力的な相互作用の原因である生成物の濃度分布が失われるためにペアが解消されるのが早いものと考えられる。このように、内部状態に依存した液滴運動の相互作用について、1つの事例を明らかにすることに成功した。この内容は論文にまとめ、投稿中である。 続いて、BZ反応の同期現象について調べた。振動する液滴は自発的にクラスターを形成し、その時、隣接する液滴の振動は同相同期することが明らかになった。2年目はこの現象に着目して、液滴間距離と同期の関係について明らかにする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、液滴運動における相互作用について明らかにすることに成功した。また、化学振動の同期についても予備的なデータを積み重ねることができ、2年目の本格的な調査の素地を整えることができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、化学振動の同期現象について実験データを積み重ね、明らかにする。一般的な分岐パラメータ(結合強度)は振動子間の距離であるが、本研究課題では振動子間の距離は液滴運動によって時々刻々と変化する。そこで、液滴の大きさをパラメータとすることで同期のしやすさについて検討する予定である。2年目で2体間相互作用の基礎データを採り終え、その背後に潜む仕組みを明らかにしたのち、3年目で集団運動の研究へと発展させる予定である。
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