研究課題/領域番号 |
23K03366
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分14020:核融合学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
成田 絵美 京都大学, 工学研究科, 講師 (50757804)
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研究期間 (年度) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 乱流輸送 / 水素同位体効果 / ジャイロ運動論コード / 機械学習 / ニューラルネットワークモデル / プラズマ乱流 / ジャイロ運動論 / 機械学習モデリング / プラズマ・核融合 / 統合型輸送コード |
研究開始時の研究の概要 |
核融合プラズマの温度と密度の分布形成機構はプラズマを構成する粒子種によって異なることが実験から示唆されている。研究代表者は分布形成の背景にある乱流輸送過程を示しながら密度と温度を予測できる輸送モデルDeKANISを開発してきた。DeKANISは機械学習を利用することで高速な乱流輸送計算を実現しつつ、他の機械学習モデルと異なり、第一原理計算による輸送解析の結果を学習に用いることで乱流輸送過程を調べることを可能にした唯一の輸送モデルである。DeKANISを拡張し、ITER等における核燃焼プラズマの予測において重要である主イオンの水素同位体効果及び不純物イオンの存在を考慮した分布形成機構を解明する。
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研究実績の概要 |
乱流輸送モデルDeKANISが扱う主イオンは本研究課題の申請時で重水素のみであったが、軽水素及び三重水素も扱うことができるように拡張した。本拡張のために二つの改良をDeKANISに加えた。DeKANISはジャイロ運動論コードによる第一原理計算の結果を再現するニューラルネットワークモデルと、その結果を利用して乱流の飽和レベルを評価する乱流飽和モデルによって構成されている。一つ目の改良はニューラルネットワークモデルに対するものである。ここでは、入力として主イオンの質量数を追加した。また、訓練データはこれまで重水素プラズマに対するジャイロ運動論コードによる計算結果のみから構成されていたが、軽水素及び三重水素を仮定した計算結果を追加した。訓練データの点数は2.7万点程度であり、そのうち軽水素は約6千点、三重水素は約5千点である。この改良によって、不安定性の線形成長率の低波数領域における最大値と最大値を取る波数が主イオンの質量数により変化する傾向をニューラルネットワークで再現することを可能にした。ここで得られる線形成長率と波数は乱流飽和モデルに渡される。二つ目の改良は乱流飽和モデルに対するものである。主イオンの質量数が大きいほど捕捉電子モードが衝突によって抑制されやすくなるという水素同位体効果のため、波数方向の線形成長率のスペクトルは質量数により変形する。このスペクトルの変形を線形成長率の最大値と最大値を取る波数のみで表現できるように飽和モデルを改良した。二つの改良により、DeKANISを利用したITERの温度・密度分布のシミュレーションにおいて、軽水素・重水素・三重水素を考慮することが可能になった。エネルギー閉じ込め時間は質量数とともに増加し、実験観測結果と同様に傾向が得られることを示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
研究計画調書に記載したとおり、乱流輸送モデルDeKANISが扱う主イオンを軽水素・重水素・三重水素に拡張し、プラズマの分布予測の実施によって水素同位体が分布形成に与える影響を示した。得られた結果は実験観測と定性的に一致するものであった。DeKANISの開発による成果は第29回国際原子力機関(IAEA)核融合エネルギー会議(FEC)において口頭発表に選出され、当該研究分野において広く周知された。 DeKANISはプラズマの中心部の乱流輸送を対象としたモデルであるが、Hモードプラズマの実験において同位体効果は周辺部でも顕著に観測されており、水素同位体効果の実験観測を定量的に再現するためには周辺部の予測も同時に行う必要がある。Hモードプラズマの周辺部の輸送を予測するための確立したモデルは世界的に見てもないため、周辺部の輸送モデリング研究を始動させた。水素同位体効果の導入には至っていないものの、簡易的な条件下で周辺部の温度と熱拡散係数を推定するモデルを提案し、計画以上の成果を得た。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度に始動させた周辺部の輸送モデリング研究を進め、プラズマの中心部と周辺部を無矛盾に扱ったプラズマの分布予測の実現を目指す。また、乱流輸送モデルDeKANISが扱うイオン種として不純物イオンを追加できるように拡張を進める。ここでは、両極性条件を満たす粒子束をイオン種ごとに算出することが求められるため、粒子輸送に着目したジャイロ運動論コードの計算結果の解析を実施し、DeKANISに結果を反映させるためのモデルを開発する。
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